中小企業庁と公正取引委員会、自動車業界へ下請法の監視を強化 違反事例の多発受けて

中小企業庁(中企庁)と公正取引委員会(公取委)は12月8日、自動車メーカーやサプライヤーによる金型の無償保管など下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反事例が多発していることを踏まえ、「自動車業界への監視を強化する」と公表した。日本自動車工業会(自工会、片山正則会長)などの業界団体に対し、サプライチェーン(供給網)全体での取引適正化を改めて要請したほか、自動車業界全体に中小受託取引適正化法(取適法)遵守の徹底を求める文書を公開した。

今年に入ってから、三菱ふそうトラック・バス、トヨタ自動車東日本(TMEJ、石川洋之社長、宮城県大衡村)、東京ラヂエーター製造、中央発條、愛知機械工業(和田民世社長、名古屋市熱田区)、カヤバなどの自動車関連企業が、下請け企業に対し、金型の無償保管を強いたとして公取委から勧告を受けた。

8日には、スズキの完全子会社であるスニック(檜原作二社長、静岡県磐田市)が、金型の無償保管と買いたたき行為を行っていたとして、同日付けで勧告を受けている。スニックは、下請け企業に発注していた部品が補修部品に切り替わった際、価格の見直しに関する協議を行わず、量産時と同じ価格で発注していた。この行為が、下請法違反に該当する買いたたきであると認定された。

中企庁と公取委は、自動車業界で違反行為が相次いでいる状況を受け、自工会、自動車部品工業会(部工会、茅本隆司会長)、日本自動車車体工業会(車工会、冨山隆会長)の3団体に対し、取適法の周知徹底と違反行為の未然防止、法令違反を誘発する商慣習の見直しを要請した。あわせて関連企業向けに、違反行為に該当する内容を明記した文書を公開した。

中企庁担当者は「悪しき商慣習が根付いており、供給網全体に取引適正化の認識が浸透していない」とし、自動車業界の意識改善を求めていくとした。

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