「人への投資」を進めていく(今年4月、トヨタ紡織の新入社員と役員ら。前列中央が白柳正義社長)

 トヨタ自動車系の部品メーカーで、従業員の自社株保有にインセンティブを設ける動きが広がっている。トヨタ紡織と豊田合成はこのほど、従業員持株会の会員に特別奨励金を支給するインセンティブ制度の導入を発表した。2022年度に制度を導入した中央発條は、奨励金の比率を引き上げた。配当や株価上昇を通じて従業員の資産形成を支援するとともに、経営や事業への参画意識を高めるなど「人への投資」の一環とする狙いもある。売り手市場が続く採用活動でも、充実した福利厚生の一環としてPRしていく。

 トヨタ紡織は6月、「特別奨励金スキーム(自己株式処分型)」の導入を決めた。同社の発行する普通株式を従業員持株会の会員に「特別奨励金」として付与し、働くモチベーションや経営参画意識の向上につなげる。10月には自己株式のうち最大で約19万株(約4億円相当)を処分し、持株会へ割り当てる。従業員1人につき20株を付与すると仮定して算出した値だ。今後は従業員に周知し、持株会への加入を促していく。

 豊田合成は6月、創立75周年の節目に福利厚生の一環としてインセンティブ制度の導入を決めた。従業員1人につき30株の譲渡制限付株式(RS)を付与するため、特別奨励金を支給する。11月に自己株式のうち最大約21万株(約5億9千万円相当)を持株会へ割り当てる。

 中央発條は、従業員持株会を通じてRSを付与するインセンティブ制度を22年度に導入、23年に特別奨励金の比率を20%から50%に高めた。27年度を最終年度とする中長期経営計画の達成に向け、人的資本投資を手厚くする。

 トヨタグループでは、グループ間の株式持ち合いを見直し、成長投資に充てるなどの動きも進む。

 従業員の自社株保有を促すインセンティブ制度は、電動化や知能化などへの対応やオープンイノベーション、新規事業などを進めていく上で、必要な人材の確保や組織の活性化に役立ちそうだ。

(堀 友香)