園児らにラリーカーとディーゼル機関車の〝協調運転〟も披露
碓氷峠鉄道文化むらの展示館のプレイベントに園児らを招待
ラリーパークではパブリックビューイングも行い、スバルは車両を展示
ポディウムセレモニーの様子。表彰台を獲得したドライバー、コ・ドライバー、ラリーカーがそろい踏み
地元期待の新井敏弘選手(スバル)はあと一歩表彰台に及ばず

 国内伝統のラリー大会〝モントレー〟が7~9日、群馬県安中市の安中しんくみスポーツセンターを起点として2年ぶりに開催された。国内および国際格式の選手権を兼ねた競技で、今回は走り屋をテーマにした人気コミック「頭文字(イニシャル)D」の舞台となった国道18号碓氷峠旧道をスペシャルステージ(SS、走行タイムを競う走路)に使用。さらに、競技のプレイベントに幼稚園児を招くなど、モータースポーツと地域の魅力、楽しさを幅広く発信した。

 モントレーは、1984年から群馬で開催される全日本ラリーで使用されてきた大会名。同大会は当初、県内の赤城山、榛名山、妙義山の「上毛三山」を中心にコースを設定していた。そこからラリーの本場、欧州にあやかりフランス語の〝3つの名峰〟(mont tres)を意味する言葉が名称に付けられた。

 今回のモントレーは「2024年JAF全日本ラリー選手権第5戦」および「2024FIA APRCアジア/パシフィックラリー選手権第3戦」を兼ねた競技。大会名は1970年代、国内モータースポーツ振興に貢献した地元ラリーショップ「キャロッセ」創業者の名前も冠し「加勢裕二杯モントレー2024」となった。

 その目玉の一つは、碓氷峠旧道に設定したSS「Old Usui Touge」(距離9.1㌔㍍)。コミックの重要な舞台となったコースで、今回のラリー入賞者の中には「(頭文字Dの)アニメを見てコースを勉強した」という選手もいた。自治体と警察、消防など行政との連携を実現し、はじめて同旧道をSSに活用できた。このことには「文化」「スポーツ」としてモータースポーツが行政にも浸透した様子が垣間見られる。

 同SSの途中にある重要文化財のめがね橋(碓氷第三橋梁)付近には、特別観戦エリアを用意。身近な峠道を疾走する競技車の雄姿を見たいという、ファンの要望に応えた。ラリーパークが設けられた安中しんくみスポーツセンターでは、スタート、フィニッシュをはじめさまざまなセレモニーを催すとともに、大型スクリーンを使用してパブリックビューイングを実施した。

 会場内にはキャロッセ、トヨタガズーレーシング、小倉クラッチ、スバルなど自動車関連企業がブースを出店。スバルには富士スバルが運営に協力し、同社スタッフがアイテム類を展示販売した。碓氷峠の観戦エリアでは、碓氷峠鉄道文化むら(安中市)からトロッコ列車を乗り継ぎ移動するツアーも組まれ、地域文化に親しんでもらった。

 安中市役所、安中駅とラリーパークの間はシャトルバスを定期運行し、周辺道路の交通渋滞緩和と、マイカー利用の抑制による二酸化炭素(CO2)削減にも取り組んだ。

 競技に先駆け実施したプレイベントは、同県出身のラリードライバーで、今回の競技で総合優勝した新井大輝選手が発起人となり、碓氷峠鉄道文化むらで開催。近隣の観光施設や自然の魅力を発信して地域振興を図るとともに、地元の幼稚園児を招いてじかに触れ合い、クルマへの関心を高めてもらうことを目指した。

 当日は、全日本ラリー選手権JN2クラスで活躍する稲葉摩人選手が協力。競技車両のシュコダ「ファビアR5」、トヨタ「GRヤリス」の運転席乗車体験や、トヨタガズーレーシングが展示したトヨタ「GRヤリスJP4-ラリー2」を交えての記念撮影など行った。

 さらに、同文化むら内を周回するディーゼル機関車「あぷとくん」と、その線路のわき道を新井選手と稲葉選手がラリーカーで並走する〝協調運転〟も実施。園児らはあぷとくんの中からラリーカーの走行シーンを楽しんだ。

 新井選手は「(ラリーを)地元の子どもたちにも知ってもらい盛り上げたい。子どもたちの笑顔がいい。女の子にも『かっこいい』『乗りたい』と言ってもらえた。これからも触れ合う機会を設けて、クルマとモータースポーツの魅力を広めていきたい」と抱負を語った。

(関東支社・大沼 康人)