EVスポーツ「FT-Se」
量産を視野にコストを意識した設計で完成度が高い
お値段2500万円の「センチュリー」(SUVタイプ)にも乗車することができる
7年ぶりのフルモデルチェンジとなりそうな、ほぼ新型の「スイフト」
デザインは大きく変わっていても、パッと見た印象はまさに「スイフト」
スイフトの内装。大ぶりのシートがクルマ好きにはうれしいポイント
「スペーシアカスタム」のコンセプト。全体的には超キープコンセプトのデザインだが、リアは比較的印象が異なる
リアシートの新機構「オットマン」。角度変更でさまざまな使い方が可能に
三菱自の主力車種の一つ「トライトン」。実物を見るとその大きさに圧倒される
大きなサイズのためリアシートにも十分な空間が。これならファーストカーにも使えるかも

「東京モーターショー」から名称を一新した「ジャパンモビリティショー2023」が東京ビッグサイトで賑わいを見せている。「乗りたい未来を、探しにいこう!」と題し、会場では自動車メーカー各社の最新モデルの展示から、これまでの自動車ショーの枠にとらわれない新たなモビリティの体験、さらに音楽ライブやお笑いライブまで、見どころは尽きない。スケールアップした4年ぶりの祭典を、日刊自動車新聞電子版の編集メンバーが独自の視点で気になるポイントを紹介する。会期は11月5日まで。

 

量産への本気度が伺えるEVスポーツ

トヨタ自動車のブースでオレンジ色が目立つ「FT-Se」。EV専用の次世代プラットフォームを採用した2シーターの高性能EVスポーツカーだ。前後に駆動用モーターを搭載する四輪駆動で、EV時代のスポーツカーのあり方を提案している。

FT-Seは、薄型のリチウムイオン電池を車体中央の低い位置に搭載し、本格スポーツカーらしい運動性能を追求した。ボディーサイズは、全長4380mm、全幅1895mm、全高1220mmと比較的コンパクトで、いかにも高性能モデルらしいフォルムも魅力的だ。

EVスポーツカーという提案自体はコンセプトカーでは定番ともいえるが、FT-Seの特徴は量産を意識した完成度の高さだろう。リチウムイオン電池を採用したのも量産時のコストを意識したためであり、車台も高価な炭素繊維複合材料(CFRP)の使用を極力抑えて、アルミ一体鋳造技術「ギガキャスト」を採用するなど、SUVのEVコンセプト「FT-3e」と主要コンポーネントを共有している。

過去に「MR-2」や「MR-S」など量産車をベースに手軽なスポーツカーを市販化してきたトヨタ。FT-Seの量産を見据えた設計に、トヨタの本気に期待が高まる。

また、トヨタブースには11月頃の発売を予定する「クラウンスポーツ」や「クラウンセダン」をはじめ、年内発売予定のSUVタイプの「センチュリー」も展示されており、実際に車内に乗り込むことができる。普段はなかなか乗る機会がない超高級車に触れることができるのも、モーターショー時代と変わらないモビリティショーの魅力といえる。

 

スズキの伝統?ほぼ新型モデルのコンセプト

スズキブースに展示されている「スイフト」と「スペーシア」。最新の販売車両かと思いきや、コンセプトと書いてある。コンセプトを名乗るが、その仕上がりは限りなく新型の量産モデルに近いとみられる。過去にも「ハスラー」やスペーシアなどのコンセプトを出展し、そのままの形で年末年始頃に発売していたことを思い出した。モーターショーに発売間近の新型車をしれっと並べるのはスズキの伝統ともいえる。

スイフトは、外観デザイン自体は現行モデルから大きく変化しているものの、フロントデザインやプロポーションなどから一目見てスイフトだとわかるデザインを採用した。室内空間やパッケージングは現行モデルと大きくは変わらない。コンパクトカーにしてはたっぷりとしたサイズのフロントシートなども走りにこだわるスイフトらしい。クルマ好きが気になる新型スイフトスポーツも期待できそうだ。

スペーシアは、まさしくキープコンセプト。パッと見た感じでは現行モデルとの区別がつかないほど。特徴的なボディーサイドの凹凸も健在で、現行モデルのモチーフはスーツケースだったが、新型は貨物コンテナだという。室内では、リアシートに内蔵したオットマンが新しい。前後に伸ばしたり、角度を変更することが可能で、立てればリアシート上の荷物の落下防止にも使えるという軽自動車らしいアイデア機能だ。

 

ど真ん中の最新モデル

三菱自動車のブースで気になるのは、2024年初頭発売予定のピックアップトラック「トライトン」。12年ぶりの日本復活となる新型は、ダブルキャブの2.4リットルディーゼルエンジンの4WDモデルのみの設定となる。

新型トライトンは、三菱自らしいオフロード性能の高さを予感させるワイルドなデザインを採用しており、実車の第一印象は「デカっ」。とにかくその大きさに圧倒される。ボディーサイズは全長5320mm、全幅1865mm、全高1795mmと堂々たるもの。全長はメルセデス・ベンツ「Sクラス」より長い。ただ、全高が高いためか、縦横比のバランスから写真ではあまり大きさを感じにくいが、実車を見ると想像以上に大きい。トヨタ「ハイラックス」も同様のサイズだが、ピックアップトラックはしばらく日本で見かけないうちに随分と立派になっていて驚かされる。

三菱自の主戦場といえば東南アジア。中でもタイは最も重要視しているエリアの一つで、ピックアップトラックの市場が大きなタイにおいて、新型トライトンはまさしく三菱自のど真ん中。失敗は許されない主力車種であり、作り手の気合いも違う。最新の三菱車の実力を肌で感じるには、大きささえ許せばトライトンはベストな選択肢かもしれない。