写真左から福田社長、VUJ樋口代表、津川店長

顧客ニーズをくみ、絞り込んだ提案を

 「いままでは市場トレンドを見極めて販売してきた。ただ、これからはお客さまニーズをくんで、寄り添った提案をしなければ生き残れない」と語るのは、オートセンター新生の福田章社長。同社が目指す理想の形は〝戦略的な価値創造〟の推進と〝量から質へ〟の実現だ。肝となるのが中小企業の持続的成長をマーケティング・ソリューションで支援するバリューアップ・ジャパン(VUJ、樋口昭久代表理事)が展開するファイナンスシステム「アドバンスプラン」となる。「TCS(トータルカーライフサポート)研究会」に参加して、その取り組みは加速している。
 同社は中古車販売からスタートした。創業時から地域中心、顧客視点、顧客フォローを重視した経営を推進。潮目が変わったのは未使用車販売に着手してからだ。同社も市場トレンドに合わせて、軽自動車を中心に、本体価格を抑え、オプションやローンによって利益を生み出す営業手法を得意としていた。3人の営業スタッフで、毎月一人当たり20~30台を販売し、福田社長は「いま思えば、お客さま視点の販売ではなかった」と振り返る。ローン会社からのバックは大きく、営業担当者も連日の商談、書類手続き、納車、顧客フォローと販売も整備入庫も好調で、構造的に疲弊はしていたものの、当時は販売方法を変えるという意識はなかった。

アドバンスプランで既存代替数など増加

 7年ほど前から、新規客を対象とした未使用車の販売台数が減少し、その販売手法で販売した顧客の代替えが伸び悩み始めた。メーカー方針の転換や働き方改革などが叫ばれ始めたタイミングでもあり、「このままでは続かない」とTCS研究会に参加した。福田社長は「研究会の目指すことや初めてアドバンスプランの話を聞いたとき、心に響くものがあり、『やらなきゃ』と直感的に感じた」と振り返る。一方で、販売の最前線にいた津川諒一店長は「たくさん広告を出して販売し、利益も得なければ目標が達成できない。キックバックが減る方法での販売には大反対した」と苦笑する。VUJの樋口代表は当時を振り返り、「福田社長がトップの責任で決断してくれた」という。津川店長は「不満はあったが、『とりあえずやってみよう』と思った。すると、すぐにお客さまの反応が変わり満足度も高くなった。特に既存客からの相談や商談が多くなった」と感じたという。結果的に既存の代替数や比率は高まり台当たり粗利や投資対効果も向上した。社内全体の理解を得てからは顧客視点の取り組みはさらに深まった。福田社長は「創業時からの原点に立ち返る最適なタイミングだった」と述べる。
 創業時からの根底にある顧客視点の考えは、設備投資のあり方からも見て取れる。既存客の安心や満足を高めるために車検フランチャイズチェーン(FC)にも加盟し、板金塗装事業も開始。FCの看板で新規客を獲得することが目的でなく、FCが持つ効率的なオペレーションなどを自社に取り込むことで、既存客との接点数や安心感を高め、社員の負担軽減や働き方改革にもつなげて社員満足を向上させている。
 今後はさらに「バリューチェーン(VC)ツール」を活用し、自社客がお得感や信頼感を感じられるようなものを採り入れていくという。福田社長は「いまいるお客さまを大切にするブランディングを土台に、お客さまや地域が本当に求めていることをオフライン・オンラインの接点から収集・蓄積・分析し、ピンポイントでアプローチする体験価値を通じて顧客の信頼を高めていきたい」と考えている。