車載ディスプレーの高機能化が進んでいる。自動車メーカー各社が大型ディスプレーの採用を拡大しつつある中で、エレクトロニクスメーカーやディスプレーメーカーが大型化やマルチディスプレーに対応する。さらに、新たな価値として「安全機能」の追加や「省電力化」につながる技術開発にも着手している。ディスプレーの操作方法においても非接触技術の開発が活発で、実用化に向けた取り組みが進む。
大型ディスプレーの搭載では、電気自動車(EV)専業メーカーの米テスラが先駆けとなった。タブレット型のディスプレーがコックピットの中心に搭載された車内空間は印象的で、このディスプレーにスイッチ類や車両情報、カーナビゲーションシステム(カーナビ)などが集約されている。これ以降、欧米自動車メーカーが新型車への大型ディスプレー搭載を積極化している。
フォルクスワーゲンは、15・0㌅の大型タッチパネルを搭載した新型セダン「ID.7」を発表した。また、ステランティスも「クライスラー」ブランドで開発した自動運転車を想定した次世代コックピット「シンセシス」に37・2㌅の大型ディスプレーを採用した。
国内自動車メーカーでは、ソニー・ホンダモビリティが発表した新型EV「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプにも運転席から助手席までダッシュボードを覆うようにディスプレーが広がる。また、ホンダは量産型EV「ホンダe」のインストルメントパネルに5つのディスプレーを配置して大画面化を実現した。
このような自動車メーカーの大型ディスプレーの採用に対応するため、ディスプレーメーカーやエレクトロニクスメーカー各社は、新たな部材の開発などに着手している。また、自動車メーカーを含む他社と連携した開発も目立つ。
韓国のLGエレクトロニクスは、自動車メーカーと協力してディスプレーの開発に取り組む。メルセデス・ベンツのエンジニアとともにプラスチック有機ELディスプレーを採用した大型ディスプレー「MBUXハイパースクリーン」を開発した。横幅は141㌢㍍に及ぶ。
フォルシアクラリオン・エレクトロニクスの小木曽克明社長も「新型EVにはピラー・トゥー・ピラーのディスプレーが採用されている。大型化や異形デザインに対応する必要がある」と話す。その一環として、同社は、2021年に親会社の仏フォルシアが買収したスコットランドのデザインLEDと連携して、ディスプレーの軽量化や曲面の液晶ディスプレーの開発に取り組む。
大型化では、ジャパンディスプレイ(JDI)も3枚のパネルを組み合わせたディスプレーを手がけている。14型メータークラスターを中心に、その左右に6・8型と12・6型のタッチパネルを一体化した。湾曲が特徴の曲面ディスプレーとなっている。
フルディスプレーメーターを新開発したパナソニックオートモーティブシステムズは、「(ディスプレーなどの統合化に向けて)メーター事業は不可欠だ」(HMIシステムズ事業部ディスプレイビジネスユニットの池田修一ビジネスユニット長)と話す。同社は、カーナビやヘッドアップディスプレー(HUD)なども手がけており、今回のフルディスプレーメーターの開発で統合化に向けた開発が加速する見通しだ。