イッセ・スノーソックス
オートソック
APITオートバックス東雲のチェーン売り場

 間もなく本格的な雪の季節を迎える中、布製のタイヤチェーンが急激に普及している。オートバックスセブンによると、今シーズンの冬物商戦が始まった10~11月の販売数量は、前年同期比で25%伸びた。チェーン全体に占める割合も約3割に達し、主流の金属製(35%)、樹脂などの非金属製(45%)に迫る。数年前まで市販市場でそれほど存在感がなかった布製チェーン。2018年からの「タイヤチェーン規制」の強化も背景に、いざというときの備えとして需要が高まっている。足元ではコロナ禍での行動制限もなくなり、帰省やレジャーでの車の移動が増えるとみられ、さらなる販売拡大にも期待がかかる。

 国民生活センターによると、16年時点のチェーンの販売数は約64万ペアだった。このうち、金属製が40万ペア(6割強)、非金属製が24万ペア(4割弱)で、布製がわずかだったとみられる。用品量販店の直近の状況をみても、この数年でシェア構造が大きく変わっているのは間違いなさそうだ。

 布製チェーンは海外ブランドが主力となっているが、日本に商品を供給する代理店各社も強気な姿勢を見せる。スペイン製の「イッセ・スノーソックス」を取り扱うフォーサイト(森口拓也社長、東京都江戸川区)は、19年から国内販売を開始。昨シーズン(21年11月~22年3月)は、販売量が前期比で2・5倍増えた。今年は軽自動車や小型車向けにフィットする日本専用商品を用意。昨年より早い8月から売り出しており、今シーズンも2~2・5倍の増加を見込んでいる。

 同社の中越豪ブランド・海外事業部部長は「大金を払ってスタッドレスタイヤを購入しても東京で雪が積もるのは年数回」と指摘。全国には路面の着雪や凍結が発生する機会がわずかな地域も少なくなく、「当社の商品を用意していれば、いざというとき対応できる」と急成長の要因を分析する。

 布製チェーンの先駆者といえる「オートソック」は、ノルウェーで開発され、日本では03年から販売が始まった。ホイール部分も覆うのが特徴だ。販売代理店の中発販売(稲垣昭弘社長、名古屋市南区)によると、昨年のシーズンは前年比で30%以上伸びたという。こちらも今シーズン最初の受注状況から、昨年以上の成長を期待している。同社の山田浩司・チェーン調達管理室長は「雪の中でも布をかぶせるだけで女性でも作業しやすい点が好評」と胸を張る。

 18年のチェーン規制の強化も需要拡大を後押しする。国土交通省は、全国の直轄国道6区間、高速道路7区間の計13区間について、異例の大雪の場合、チェーンがないと通行できないようにした。同省は布製チェーンも認めており、軽くて車内にも収納しやすい商品特性から、規制区間を走行するドライバーが買い求める動きも増えたとみられる。

 用品店でも注目度が高い。大型店「APIT(アピット)オートバックス東雲(東京都江東区)」のチェーン売り場では、布製が目立つように置いてある。価格も消費税込みで1万~2万円程度と手が届きやすいことも、ユーザーの支持を集めているようだ。

 ポリエステルなどを素材とする布製チェーンは、繊維が路面の雪や氷に張り付き、くさび役を果たす。テスト時の条件が異なるため、単純比較はできないものの、イッセは圧雪路において時速40㌔㍍以下で、80㌔㍍まで走行可能としている。オートソックは雪に覆われたテストコースで数百㌔㍍の走行を確認したという。一定の耐久性もあることから、今後は大型車や、タクシー、業務用車両などにも広がりそうだ。

(小山田 研慈)