〝カイクラ〟で一人のお客様に店舗全体での対応が可能に
都丸雄太社長

 群馬県内でホンダシェアトップを誇るホンダカーズ群馬(都丸雄太社長、群馬県前橋市)。県内ホンダシェア全体の過半数を握り圧倒的な販売力を誇る。〝100年に一度の大変革期〟という言葉通り、自動車ディーラーを取り巻く商環境は大きく変化しようとしている。その一つが車両のEV(電気自動車)化。都丸社長は「エンジン性能によるメーカー、ディーラー差別化が難しくなる」と指摘。こうしたなか、「どれだけ管理顧客数を持っているかが経営を左右する。ホンダディーラーとしての顧客を基軸に、顧客のトータルライフのなかでどれだけ接点を作れるかが課題」とし、日頃の〝ユーザー対応品質〟を重用なものと位置付ける。この品質を高めるツールとしてシンカ(江尻高宏社長、東京都中央区)が提供する「カイクラ」が欠かせない存在となっている。

電話を取る前に誰からのコールか事前に把握。〝電話のみえる化〟を実現

 カイクラは〝会話クラウド〟の略。既存の車両管理ツールや顧客管理ツールと紐づけることで、着信時に相手の情報を瞬時にパソコンブラウザに表せる。つまり、受電前に誰からのコールか事前に情報が把握できる。「電話のみえる化」を可能にする。
 顧客リストには名前、車種、ナンバー、営業担当者名、車検到来日、保険満了日などの情報に加え、現在の対応状況などが確認できる。

カイクラ導入で電話の保留・待機時間がなくなり業務効率化を実現

 同社は2021年4月、県内2社のホンダディーラーを吸収統合したことで、社員数は400人弱、拠点数は19と大規模化した。当時、このうちの1社がカイクラを導入しており、「便利に利用している姿を見て他拠点への展開を決めた」(都丸社長)という。
 合併前に〝車両ナンバー読み取り機〟を導入し、名前を呼びお出迎えをするという体制を敷いていたが、「『電話でも同様のサービスができたらいいな』と思っていた」(同)と導入した経緯を振り返る。
 お客様から電話が掛かってきた場合、一般的に3コール以内に受電することが望ましいとされている。導入前は「受電をためらう社員の姿が散見された。また、受電後も案件によっては長時間お客様にお待ち頂くケースも珍しくなかった」という。
 電話の掛け手(お客様)と受け手(会社側)とではそれぞれの温度が異なるもの。お客様からの電話が、会社側からの電話に対する折り返しの電話だった場合、〝なぜ、待たされるのか〟理解できないため、後々の関係性に悪影響をもたらす可能性がある。
 また、都丸社長は「受け手である社員にとっても、状況が切羽詰まった場合、ほんの数十秒が何分もかかっていると焦りを感じてしまう」と指摘し、社員の働きやすさに及ぼす影響の大きさに触れる。
 導入後、こうした問題はすべて解消した。受電をためらう社員の姿は目にみえてなくなり、保留・待機時間の解消、そして業務効率化に結びついた。

電話やメールなど顧客が求める多様なコミュニケーションにうまく対応

 カイクラは「履歴」「メモ」「SMS」など様々な機能から構成されている。履歴機能はカイクラの基本ともいえる機能で、受電した日時を記録することができる。業務時間外や休日に掛かってきた電話の顧客対応に大きく役立つ。
 メモ機能はお客様から受けた内容や誰が受けたかどうかを記録として残せるというもの。同社では「案件内容や担当者名の記入を徹底して行っている。また、本社・拠点間の連絡時にも積極的に活用しており、業務の効率化に結びつけている」(都丸社長)。
 また、「顧客が求める接点の持ち方は多様だ」と強調する。(同)電話での会話を求める人もいれば、Eメール、SMS、DM(ダイレクトメール)など様々で、こうした情報も蓄積可能だ。
 SMS機能は開封率が高いとされるSMSを利用することで、キャンペーンや車検点検入庫など各種案内を効率よく展開できるというもの。同社の規模の場合、1回DMを展開する場合、約500万円の郵送費をみなければならないという。同機能を活用することでコストの削減につなげている。
 同社によるカイクラの活用方法は対顧客間・社内間業務だけにとどまらない。「今の若手は電話を取り次いだことがない。知らない人から掛かってきた電話、他人に対する電話
 に出た経験がない」(同)とし、新人研修にも役立てている。

他事業、異業種とのコラボで獲得した様々なサービスをアプリで展開

 同社では顧客の色々なシーン・生活の場などに接点を築き、寄り添うことのできる様々なサービスが提供できる体制を中長期的に整えていく方針を示している。
 2010年にBP(板金塗装)事業、レンタカー事業に乗り出したのを契機に、飲食事業も展開。さらに、群馬県内の異業種他社と協力し、各社それぞれの顧客を呼ぶことでシナジーを創出したい考えだ。
 こうした取り組みを通じて獲得した〝あらゆるサービス〟をお客様に提供する手段として、自社独自のアプリ開発に取り組み始めている。
 システム専門の部署を立ち上げる力の入れ様だ。都丸社長は「ホンダカーズ群馬のデータベースに加え、同社グループの飲食店事業、群馬県内の異業種他社などのデータベースなども盛り込んでいきたい」と展望を語る。一連を展開していく過程においても、カイクラが果たす役割は大きなものになりそうだ。