日本精工はステアリング事業のてこ入れに乗り出す。フォルクスワーゲン(VW)グループから電動パワーステアリング(EPS)を受注し、来春から量産する。ドイツのティッセンクルップとはステアリング事業で協業して製品ラインアップを拡充する。市場拡大が見込まれる電気自動車(EV)などの電動車向けシングルピニオンEPSをターゲットに新製品の開発に注力する。開発・生産体制を拡充して低迷しているステアリング事業の早期立て直しを図る。
日本精工はVWと下流アシストEPSの一つであるシングルピニオンEPSを共同開発、VWのEV専用プラットフォームである「MEB」向けに受注を獲得した。2023年春から日本精工の中国工場で生産して、VWに供給する予定。
日本精工はコラムタイプEPSの開発で培った技術を生かして開発した下流アシストEPSの受注拡大を目指す。共同開発したVWと連携しながら、VW以外の自動車メーカーからの受注獲得も視野に入れる。すでに「国内外の自動車メーカーから声がかかっている」(日本精工・御地合英李執行役専務・自動車事業本部長)としており、販売活動を強化していく。
また、日本精工はステアリング事業を強化するため、ティッセンクルップとも協業する。日本精工は小・中型車向けのコラムアシストEPS、ティッセンクルップが中・大型車向け下流アシストEPSに強みを持つ。両社の強みを融合することで、さまざまなタイプのステアリング製品のラインアップを取りそろえて、自動車メーカーのニーズに柔軟に対応していく。
両社を合わせたグローバルでのステアリング市場のシェアは約15%で業界3位。22年度中に合弁会社を設立する計画で、詳細を協議している。今後、製品の拡充に加えて、生産拠点の相互活用も含めた相互補完体制の構築を検討しており、グローバルでのシェアアップを図る。
製品の研究開発では、市場拡大が見込まれるEVなどの電動車に適している高出力対応のシングルピニオンEPSに注力して、ステアリング事業の拡大を図る。
日本精工は26年度を最終年度とする「中期経営計画」で4%程度にとどまる自動車事業の売上高営業利益率を8%に引き上げる目標を掲げる。これを達成するためには、低迷しているステアリング事業のてこ入れが大きな課題で、VWやティッセンクルップとの協業や開発体制を強化して、収益力の向上を図る。