日産東京販売ホールディングス(NTH)は、東京エリアを中心に、日産とルノーのディーラー事業など8つの事業会社を展開する。販売ネットワークは新車が111店舗、中古車が19店舗で、国内の日産ディーラーとしては最大規模となる。2021年7月には東京日産、日産プリンス東京、日産プリンス西東京を合併した日産東京販売を設立。新たなチャレンジとシナジーの創出、持続的な成長を続けている。カーボンニュートラルやSDGsにも積極的に取り組む中、今後の方向性や企業価値におけるSDGsのあり方などについて話を聞いた。
グローバル投資家を視野にプライム市場を選択
-SDGsを推進する背景について
「東京証券取引所の市場区分の再編に合わせて、当社はプライム市場を選択した。これはグローバルな投資家を視野に入れた取り組みの一つとして位置付けている。グローバルを視野に入れる以上、カーボンニュートラルやSDGsへの取り組みは欠かせないものと考えている。また、銀行や官公庁、そして消費者もこういった取り組みをしていることが選択するうえでの基準となりつつある。これまでも推進していたが、これからは一層力を入れて進めていく必要があると認識している」
-具体的には
「例えば、電気自動車(EV)の販売。日産としては『リーフ』でEVの販売において10年間の販売実績とノウハウがある。カーボンニュートラルを推し進める上で、EVは各社もラインアップをそろえつつあるが、当社は他社と比較すると実績とノウハウにおいてイニシアチブがあるととらえている。また、私たち自身がCO2をどれだけ排出しているのか、把握する必要があると考えており、今年度はその数値を分析していく方針だ」
-数値の分析とは
「自動車メーカーはサプライチェーンも含めたCO2排出量の削減に乗り出している。販売会社においては現状そういった流れはないものの、先んじてCO2排出量の把握をしていくということ。すでに電子化やテレワークの促進などでCO2排出量の削減に効果を発揮していると想定できる部分もあるが、あくまでこれは感覚によるもの。算出方法はいくつかあるため、試しながら最終的にどういった方法で算出して削減していくのかを選択していくことになる。そう遠くない将来、ソーラー設備の設置など、店舗経営にもCO2削減を採り入れていきたい」
-社内への周知徹底の必要もありそうだ
「社内報などでSDGsの取り組みについて展開しているが、まだ自分事として理解している社員は多くはないかもしれない。SDGsという言葉はインターネットやテレビなどで見ることも多く、理解しているかもしれないが、そこから先、自分の会社や仕事とどう結びつくのかを今年度は本格的に周知していく必要がある。これらを社員に理解してもらうことで、CO2削減目標を指標として示すことができるようになるのではないかと考えている」
EVの普及で災害時の電力確保貢献へ
-地域貢献や災害協定にも積極的に取り組む
「災害時におけるEVからの電力供給の協力など、自治体などとの協定を積極的に行っている。東京都は環境意識の高い方が多く、EVの購入補助なども充実していることから、EVの台数を増やす環境が整っているといえる。EVの良さが理解され、台数が増えれば、自治体などでの活用が広がっていく可能性が高まる。災害等による停電発生時に、EVからの電力供給によって地域のかたがたの安心安全を確保することで、より一層地域に貢献していきたいと考えている。今後も積極的に連携する自治体の数を増やしていきたいと考えているが、自治体以外にも、企業などあらゆる連携の可能性も視野に入れていきたい。地域のかたがたに貢献できる取り組みをしっかりと継続していくことが、本業の成長にもつながっていくと考えている」
-ダイバーシティも積極的に進める
「ほかの販社と比較しても、当社は以前から多くの外国籍スタッフを採用してきた。これは多様性を重視してきたことの表れである。外国籍の人が日本で暮らし、仕事をしていくにあたり、彼らの入社後もベテランの外国籍スタッフを講師に招き、悩みや相談事を共有して解決策を考える研修を昨年設定した。こういった場を継続して設けることで外国籍スタッフが働きやすい環境づくりができると考えている」
「将来的には、当社で働く外国籍スタッフから、管理職も担える人財や、母国との橋渡し役となる人財を輩出できるよう、支援を続けていく」
-採用活動においてSDGsをどのようにアピールしていくのか
「会社としては、プライム市場上場企業として、より一層ガバナンスや持続的な成長に積極的に取り組んでいくことをアピールしたい。これまでは東証一部上場企業であることが学生や保護者に高い安心感を持ってもらえる材料の一つだった。今後はプライム市場への上場企業となることで、サステナブルな運営を目指している会社であることが訴求できるため、より一層安心感のある会社として、入社志望の動機につなげてもらえるのではないかと期待している」
-今後について
「今年度はEVの積極的な拡販、CO2排出量の把握、自治体などとの連携強化が重点課題となる。加えて、当面の最重要課題としては女性役員の登用が挙げられる。この点に関しては一朝一夕でできるものではないため、女性幹部候補育成などに取り組んでいく。まずは女性の活躍推進の第一歩として女性CA(カーライフアドバイザー)の比率を半分にまで引き上げたいと考えている」