ソニーグループは、AI(人工知能)の研究開発を手がける子会社ソニーAIなどが開発した「GTソフィー」が、プレイステーション4の「グランツーリスモ・スポーツ」で、世界トップクラスの4人とのレースで勝利したと発表した。ソニーは電気自動車(EV)市場への参入を検討しており、今回開発したAIは自律運転車レースや自動運転技術の開発に活用することも視野に入れる。

 GTソフィーの開発では、ポリフォニー・デジタル、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが協力した。既存のアルゴリズムやAIをトレーニングするためのインフラでは解決が困難な課題に対して、新たな深層強化学習アプローチとプラットフォームを構築することで、難度の高いレーシングゲームをマスターした。

 具体的には、車の挙動やドライビングライン、難易度の高いコースを攻略するための精密な操作、常時変化するレース状況での瞬時の意思決定、スリップストリームパスやクロスオーバーパスなどの駆け引きを含む戦術の組み立てを学習した。また、過失による衝突回避や、対戦相手のドライビングライン尊重など、レースマナーについても習得した。

 GTソフィーはFIAグランツーリスモ・チャンピオンシップ2020の世界チャンピオンなど、世界トップクラスの4人と昨年7月と10月に対戦してテストした。7月の結果から改善したGTソフィーが10月にタイムトライアルとチャンピオンシップに沿ったレースの両方で4人に勝利した。

 ソニーAIの北野宏明CEOはGTソフィーが「自律運転車によるレースや、より広範な自律運転技術の開発、高速で動作するロボットの開発や、より広範なシステム制御分野で新たな機会をもたらす」とコメントしている。また、ポリフォニーの山内一典プレジデントは「(GTソフィーが)自動車の未来に貢献できると信じている」としている。

 今回の研究開発の成果は10日(日本語版)に公開された科学誌「ネイチャー」に論文が掲載されている。