コロナ禍からの本格回復も半導体の供給次第といえる(写真はイメージ)

 世界的な半導体不足が自動車メーカーの2022年3月期の業績の先行きに影を落としている。日産自動車は50万台の影響が生じると想定し、三菱自動車は上期を中心に8万台の影響を見込む。いずれも通期では影響の半分を挽回生産する方針だが、両社が目指す赤字からの脱却に半導体不足が水を差す。トヨタ自動車は現状、大きな影響を見込んでいないものの、近健太執行役員は「年初計画から生産を上積みする計画を立てているが、それを少し慎重にみている」と明かす。半導体の供給が正常化するタイミング次第で、日系自動車メーカーの業績が大きく左右されそうだ。

 半導体不足をめぐっては、昨年夏以降のコロナ禍からの急激な回復を受けて自動車各社が半導体の発注を一斉に増やしたことがきっかけになった。一方、在宅勤務の浸透などでパソコンやスマートフォン、データセンター用などの半導体需要が急増。半導体メーカーは車載用を民生用の半導体生産に切り替えていたことで、車載用の需給がひっ迫した。

 自動車メーカー各社やティア1サプライヤーは半導体確保に動くが、半導体はリードタイムが長いことや生産が台湾のTSMCを中心とするファンドリーに集中していることから、結果的に減産や停止を余儀なくされた。

 それでも2月の20年4~12月期決算発表の時点では一部の企業を除いて影響は限定的だった。ところが今年、半導体不足に拍車をかけるように2月に米テキサス州の寒波による停電、3月にルネサスエレクトロニクス那珂工場(茨城県ひたちなか市)の火災が発生。状況が深刻化した。

 「最も頭が痛い問題だ」―。三菱自の加藤隆雄社長兼最高経営責任者(CEO)は嘆く。21年3月期に構造改革に伴う多額の特別損失などで2期連続の最終赤字を計上した三菱自は、今期3期ぶりの黒字転換を目指す。不足する半導体を使用した機構を用いないモデルの拡販を図る方針だが、影響が下期以降に長引けば黒字確保の道のりは険しくなる。

 収支トントンの営業利益予想を発表した日産も半導体の影響とレアメタルの高騰がなければ2%の営業利益を確保できる見通しだった。今期の業績予想には、差し引き25万台の影響を織り込んだ。

 前期に6万1千台分の影響を受けたスバルは4月に2万5千台を生産調整した。中村知美社長は「今期には2万5千台の全てを挽回できる」と述べるが、正常化の時期については「はっきり言って分からない」と計画の先行きは不透明だ。

 13日以降に決算を発表するホンダは2月の20年4~12月決算発表の説明会で「21年度には半導体の影響は出ないだろう」(倉石誠司副社長)と見込んでいたが、国内の四輪車工場拠点の稼働を5月に5~6日間停止することを決めた。半導体の影響が軽微だったスズキは4月に続いて5月にも小型車を生産する相良工場(静岡県牧之原市)を止めた。

 一方、トヨタは「東日本大震災の教訓からスピーディーに代替品を評価できるようになったことも影響を抑えられている要因だ」と述べ、競合他社と比べて影響を最小にとどめている。本来であれば各社ともにコロナ禍からの大幅な業績回復が見込めるはずだった22年3月期。半導体調達の巧拙が各社の業績に反映される可能性が高い。