イーアクスルを軸に車載事業拡大を目指す

 日本電産が電気自動車(EV)用駆動モーター「E―Axle(イーアクスル)」で攻勢をかけている。M&A(合併・買収)による主要部品や設備の内製化を積極展開するとともに、今後、生産体制も再編する。競争力の高い製品をグローバルで供給できる体制を整備して2030年までにEV向けモーターで世界シェア40~45%の獲得を目指す。カーボンニュートラル社会実現に向けた自動車の電動化という追い風にのって、事業拡大に向けた体制を早期に整えることで、ライバルとなる独ボッシュなど、メガサプライヤーに対抗していく構えだ。

 「25年が(EV普及の)分水嶺になる」(日本電産・永守重信会長兼最高経営責任者)ー同社は、25年にはEVのコストの3割を占めるとされるバッテリー価格が現在と比べて約30%下がり、これに伴ってEVの販売価格も下がって一気に普及が進むと見ている。

 EV市場の拡大を見据えて投資を含めて積極的に打って出る。ターゲットに据える市場が中国と欧州だ。両地域とも燃費規制の強化を背景にクルマの電動化が加速する見通しで、欧州の一部では25~30年代にかけて内燃機関の新車販売禁止が打ち出されている。欧州と中国の自動車メーカーはEVの開発を本格化しており、電動車向けモーター事業の拡大のチャンスが拡がる。

 同社の関潤社長は「中国の自動車メーカーは(EVの製造で、主要部品であっても)内製化にこだわっていない」という。すでに中国系自動車メーカーからイーアクスルを相次いで受注、多くの案件も抱えており、事業拡大に向けた準備を急ぐ。大連市と平湖市で建設中の新工場は年内に完成予定で、中国でのイーアクスル生産能力は年間240万台となる見込み。

 セルビアにも工場を新設して欧州自動車メーカー向けにイーアクスルを生産する予定だが、早くも次の段階に目を向けている。イーアクスルの受注拡大を見越して、今後、欧州で生産能力増強する場合、建設中のセルビア工場近隣にすることを決めた。中国ではイーアクスルや車載モーターを製造する拠点を中国浙江省平湖市に集約しており、生産性が高い。今後、イーアクスルの生産能力を増強するための工場の新・増設では、地域ごとに集約する方針で「第二の平湖」(関社長)を各地に展開し、能力増強と効率化の両立を図る。

 ライバルに勝つ競争力の高い製品を供給するため、部品や設備の内製化にも取り組む。2月には自動車用トランスミッションや減速機などの生産設備を手がける三菱重工工作機械の買収を決めた。これまで外注していた減速機のギアを内製化するためだ。EV市場が本格的に立ち上がると、イーアクスルの受注が急増する可能性がある。その時、減速機のギアを製造する工作機械を外部から調達していると生産能力増強のボトルネックになる可能性がある。需要が急増してもイーアクスルやモーターを短期間、低価格で提供する体制を整える。今後もアルミダイカスト部品などを除いて重要部品は内製化を検討していく。

 メガサプライヤーに負けじと、EV向けモーターに賭けて投資を拡大する日本電産。長期目標「2030年に売上高10兆円」という、非現実的な目標を達成できるかはEVが世界的な規模で普及するかにかかっている。