トヨタの寺師茂樹取締役執行役員(自技会会長)
日産の坂本秀行取締役執行役副社長
本田技術研究所の三部敏宏社長

 自動車技術会(自技会、寺師茂樹会長)が21~23日にウェブ上で開催した「2020年秋季大会」では、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの幹部が、未来のモビリティ開発の在り方について議論を交わした。その中で、自動車市場で存在感を高めているテスラや「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」と呼ばれる巨大IT企業について言及。過去にテスラと「RAV4EV」を共同開発していたこともあるトヨタの寺師茂樹取締役執行役員は「トップダウンがはっきりしている会社。スピード感がすごい」と評価した上で、「われわれは過去の失敗や経験を次に生かせる」とし、世界規模で開発、生産を展開してきたグローバルメーカーとしての強みを強調した。

 「電気自動車(EV)の分野で先頭を走っているのはテスラ。われわれはこてこての完成車メーカーで、過去のレガシーを引きずっている。脂肪がついたまま走っている状態だ」。本田技術研究所の三部敏宏社長は、足元のEVを巡る開発競争について率直にこう話す。ゼロベースからEV専用メーカーとして立ち上がったテスラは、車を製作する部署とは別に、「ECU(電子制御ユニット)」「自動運転」「ソフトウエア」など個々のコア技術ごとに組織が独立して開発を進めるのが特徴。これに対して日系完成車メーカーは、車づくりの下に個々の技術開発が紐づいていることが多い。「ゆえに(テスラは)フットワークが軽い」(ホンダの三部氏)。レガシーを「脂肪」と称した理由だ。

 トヨタは、テスラと約10年前にRAV4EVを共同開発していた。自身も現地で携わった寺師氏は「(規模が)小さい会社だからこそのスピード感があった」と振り返る。日産の坂本秀行取締役執行役副社長も「自動車会社の枠組みからはみ出している」とテスラの手法を評した。

 ただ、新興メーカーのテスラは、完成車メーカーが長い歴史の中で積み重ねてきた経験や知識を持たない。日産の坂本氏が「(過去に)お蔵入りになった計測技術や実験技術がこの時代で財産になることもある」と話すように、過去の遺産がCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代で花咲くことも少なくないと言う。トヨタの寺師氏も「われわれは過去の失敗を生かすマイルストーン的な仕事をしている。それをグローバルで展開している」ことを完成車メーカーの強みと捉えていた。

 CASEの領域で攻勢を強めているグーグルやアマゾンなどGAFAに対しても「(GAFAは)ハードを持たない。われわれが得意なハードとデジタルを組み合わせれば戦える」(ホンダの三部氏)と自信を見せる。トヨタの寺師氏が「『CASE』という名が普及する前から、個々の技術はすでにわれわれはやっていた」と話すように、個々の技術開発は自動車メーカーの領分でもある。電子化に伴う部品のモジュール化が進んでいるが、トヨタの寺師氏は「単品(の技術開発)を突き詰めるのも技術者の使命」と話し、ホンダの三部氏も「CASE、MaaS(サービスとしてのモビリティ)はエンジニアにとって絶好のチャンスだと捉えてほしい」と若い世代にエールを送った。(村田 浩子)