パナソニックの新製品は高精細な有機ELを採用
アルパインは車種専用ラインアップを充実させて所有感を高める

 市販カーナビゲーション(カーナビ)分野では、ナビ本体からディスプレーを独立させたフローティング構造を採用した製品が続々と登場している。2日にはパナソニックオートモーティブ社が10㌅型の新機種を発表し、従来品からさらに向上した性能を訴求する。高性能・高単価なフローティング型がカーナビ市場の回復を担う次世代のスタンダードとなるか、注目が集まっている。

 フローティング型カーナビは、2DIN企画のメインユニットから、連結部を介して画面がセリ出すことで、浮かび上がるように見える構造が特徴だ。角度を容易に調整できるほか、画面が手元に近づくことにより操作性も高い。横幅180㍉㍍の2DINや同200㍉㍍のワイド2DIN規格に取り付ける従来型の汎用カーナビでは、画面サイズは7、8㌅が限度だったが、サイズの制約がなくなったことでさらなる大画面化が可能となっている。

 フローティング化を開拓したのがパナソニックだ。インダッシュ型カーナビの大画面化が頭打ちとなる中、同社は2010年代前半からフローティング型の開発に着手。16年に発売した9㌅型「CN―F1D」で、市販カーナビとして業界初のフローティング化を実現した。「当初は商品化するだけで精いっぱいで、消費者から受け入れられるかも不安だった」(インフォテインメントシステムズ事業部市販・用品ビジネスユニットの荻島亮一ユニット長)というが、多数の車種に適合する汎用規格ならではの利点から既販車ユーザーの引き合いも高く、市場への定着を果たしている。

 今月2日に発表した10㌅型「CN―F1X10BLD」および「CN―F1X10LD」では、430車種以上に対応。薄型化により画面重量を30%軽量化して、フローティング型の課題だった耐振性も改善した。加えて有機ELパネルを市販カーナビとして業界初採用し、優れた色再現性でさらに向上した映像体験を訴求する。2機種合わせて月産3千台を計画し、実売価格はCN―F1X10BLDが20万円超を想定する。「決して安い商品ではない」と認めつつも、「新コンセプトに掲げた『移動を、感動に。』を体現する商品として、価格に見合った価値を提供できるはず」(同)と自信を見せる。

 こうした流れに対抗し、他社からもフローティング型機種が続々と登場している。17年にはアルプスアルパインが、業界トップの画面サイズを実現した11㌅型「フローティングビッグX」シリーズを投入。汎用モデルに加えて車種専用モデルを順次ラインアップし、純正品のような内装との一体感を訴求している。今年7月にはJVCケンウッドが9㌅型「MDV―M907HDF」を発売した。パイオニアも6月に9㌅型ディスプレーオーディオ(DA)「DMH―SF700」を発売。AVユニットながら、「アップル カープレイ」や「アンドロイドオート」に対応することでナビゲーション機能を利用可能とした。

 純正ディスプレーの高度化やスマートフォン(スマホ)アプリの高機能化など、近年はカーナビに対する逆風が指摘されてきた。一方で、新型コロナ感染予防の観点からパーソナルスペースとしてのクルマの価値が見直され、車内の快適性向上に対する消費者意識も高まっている。音響システムやドライブレコーダーとも連動する高性能カーナビは、車内空間の上質化を直ちに実現できる手近な市販用品だ。各社はコロナ禍も追い風に、新たな時代のニーズに応えることで巻き返しを図っている。