電動パワートレインの開発用システムの構成図

 電子制御用のECUや、そこに内蔵されるソフトウェアを開発するためのシステムツールを手がけるETASが、電気測定用テスターの老舗として知られる日置電機と協業。新たな機能を取り入れた電動パワートレイン向けの開発システムを発表した。


インバーターやモーターの電力変換効率や損失を正確に測定する新機能を追加

 この開発システムで注目すべきなのは、電動パワートレイン向けとして加わることになった日置電機製の電力測定分析器パワーアナライザPW6001。電動パワートレインの開発には、内燃エンジンのそれとは異なる計測技術が求められる。なかでも難しいのが、インバーターの高速スイッチングによる高周波成分を含む高電圧、大電流の電気計測だ。今回、ETASは日置電機のパワーアナライザを開発システムに加えることで、高圧大電流の電気を高精度で捉え、インバーターやモーターの電力変換効率や損失を正確に測定する機能を新たに追加した。日置電機は、困難とされるインバーター関連の電気測定において世界有数ともいえる豊富なノウハウと技術を持つ、電気測定用テスターの老舗として知られる測定器メーカーだ。

開発システムの中核となるINCA。その特徴はインバーターを介したモーターの制御と自動計測

 電動パワートレイン向けの開発システムの中核となるのは、ECUのキャリブレーション(適合)用ツールであるINCA。自動車業界においてデファクトスタンダードとして知られるINCAで、インバーターを介したモーターの制御と、その動作を自動計測できるのが、その特徴である。
 一般的なxEVシステムでのインバーター/モーター制御ECU開発では、シミュレーション内の地形情報に基づく走行負荷をリターダーやブレーキなどで作り出しながら、インバーター/モーターの制御パラメーターを設定し、応答が狙い通りであるか否かをECU内部の値、電力や電流を計測し、判断する。応答が狙いから外れる場合は、制御パラメーターを変更し、再び計測する。こうした制御パラメーターの変更と計測確認のループからなる作業は、手入力で行うこともできるが、INCAの強みは、このような作業の自動化ツールINCA-FLOWがすでに提供されている点にある。基本的なデータ計測作業が自動で済んでいれば、その手間と時間を最小限に抑えることができる。
 また、このループ作業では、制御パラメーターだけではなく、制御ソフトウェアを変更・修正することもある。その場合、バイパス処理といわれる手法が用いられる。この手法では、外部のプロトタイピングモジュール上で動作するソフトウェアと、ECUが協調動作することで、ECUそのもののソフトウェアを変更することなく検証が可能になる。

実験精度が大きく向上する革新的ソリューション

 電力や電圧電流値といった電気に関するパラメーターが正確に得られるということは、実験の精度が大きく向上することを意味する。つまり、これまで以上に効率的な開発が可能になることはもちろんのこと、キャリブレーションの品質(適合品質)向上にもつながる。電動パワートレインにおける電気の振る舞いは、内燃エンジンの燃焼状態に相当する。それが可視化されるのだから、もはやこれは革新的ソリューションである。