車両の電動化の加速で、サプライヤー各社が熱エネルギーマネジメント領域でのグローバル競争力強化を急いでいる。熱マネ領域は内燃機関でも引き続き重視されるが、特に電動車向け熱マネ領域は、中国をはじめグローバルで大幅な市場拡大が見込まれ、マーケットリーダーとしてのポジション獲得競争が過熱しつつある。

 マレリ(ベダ・ボルゼニウス社長、さいたま市北区)は今年8月、中国の上海海立集団股份有限公司(Highly)と戦略的パートナーシップの締結を発表した。電気自動車の空調システムに不可欠な電動コンプレッサー事業の強化を狙うほか、マレリが保有するコンプレッサーと空調事業を運営する合弁会社の2020年1月の設立を目指す。ベダ・ボルゼニウス社長は「Highlyはすでに電動コンプレッサーで大きなプレゼンスを誇っており、中国だけでなく、グローバルでシナジーを期待できる。合弁会社の設立でHVAC(暖房、換気、空調)事業をさらに強化したい。HVACは競争が激しく、マーケットリーダーとなるのが難しい分野だ。特に電動化の大市場である中国ではパートナーシップが有効だ」と期待を込める。

 デンソーは、電動化対応として熱マネ領域を重点開発領域と見込む。同社のサーマル事業としての売上高規模は約1兆4千億円で、収益率の向上を課題とする。10月末の中間決算説明会の場で松井靖経営役員は「今後の電動化を見据えれば、エアコン分野は付加価値を高める余地があるが、電気自動車(EV)では必要なくなるラジエーターなどは今後の成長を見込みにくい」と分析し、事業としての将来性に含みを持たせた。

 独マーレはサーマルマネジメント事業を中核事業の1つに据え、パワートレーンとキャビンの双方での熱マネ対応が可能な点が強みだ。内燃機関向け熱マネに加え、今後電動化領域への本格参入を狙う同社は、自社の熱マネ技術と樹脂成形技術を生かして冷却パネルを含めたバッテリーケースの開発、量産化を目指している。20年1月に電動化対応力強化の一環でメカトロニクス事業本部を新設し、熱マネ技術をベースとしたシステム提案力向上を目指す。

 一方で今年10月末、日立製作所系とホンダ系3社のサプライヤー4社の統合が発表され、これに参画するケーヒンは、空調事業に関しては、日立との統合シナジーを見込みにくいとの判断で、新たなパートナーとしての譲渡先を検討している。同社の空調の売上高規模は約700億円で、HVACや熱効率、システム開発を柱とする。同社はEVの熱マネシステムの自社開発を目指すなど次世代電動車技術の構築に注力してきた。18年度から、英国に本拠を置くエンジニアリングサービス会社「HORIBA MIRA」との提携に基づく事業を開始し、EVシステム全体の研究開発体制を強化した。空調やパワートレ―ンなど幅広くノウハウを蓄積している。同社の相田圭一社長は「電動化で熱マネ領域は重要なので、空調事業では新たなパートナーを検討することでグローバル競争力のあるシステムサプライヤーを目指したい」と将来を見据える。

 サンデンホールディングス(サンデンHD)は、今年11月、日本電産とEV向けの熱マネシステムの共同開発を開始したと発表した。モーターの排熱と空調システムを統合的に熱マネジメントすることで、EVの航続距離拡大につなげるのが狙い。EVでは、空調などの電装製品の使用が航続距離を大きく左右する。サンデンHDが空調領域で蓄積した知見と、日本電産のトラクションモーターおよびインバーターの知見を合わせることで、将来的に電動車向けの空調と駆動装置の統合的な熱マネシステムの開発を加速させる。

 急速な成長が見込まれる電動車向け熱マネ領域は、開発スピードが求められ、サプライヤー単独での成長はたやすくない。開発コスト抑制やグローバル競争力強化の一環で、今後さらなる協業や統合が進みそうだ。