中東情勢の悪化の影響で一時、エンジンオイルに加え、板金塗装(BP)に使う塗料やシンナーなどの仕入れが十分に行えなくなった。在庫の確保が不安定になり、一部の仕事に支障が出ていたものの、約半年たった今は落ち着きを取り戻しつつある。当時、何が起こっていたのか、国土交通省や関係事業者の証言を基に振り返る。
国交省物流・自動車局の自動車整備課によると、管轄で最初に影響が出たのはトラック・バス向けの燃料で、特に軽油だった。3月中旬から下旬にかけ、価格が高騰して手に入らないといった話が寄せられたという。
4月に入ると、自動車のBPに使うシンナーが手に入りづらいという話も出てきた。そのため、同課では情報提供窓口を設置し、整備事業者からの情報収集に乗り出した。
これは、整備事業者でエンジンオイルや塗料などの仕入れに違和感を覚えた時期とほぼ合致する。車検やBPを手掛ける和幸工業(五十嵐正社長、千葉県印西市)では、「3月ごろにまずシンナーが入らないという話があり、次第に白系塗料にも広がっていった」(五十嵐社長)と振り返る。
整備に必要な消耗品類を卸売りしている日本自動車整備商工組合連合会(整商連、喜谷辰夫会長)も、3月下旬に新規の整備事業者からのエンジンオイルの受注を一時停止した。供給元に問い合わせたところ、中東情勢の影響もあり「先行きが不透明」との回答を受けての判断だった。今は販売を再開しているものの、前年同月の実績をベースとした供給が続いており、完全に回復したとは言えなさそうだ。
国交省の自動車整備課の情報提供窓口には、開設直後から事業者の不安の声や仕入れが滞った物品の供給要請が数多く寄せられた。適切な整備ができなくなる事態を避けるため、地方運輸局や運輸支局の協力も得て、整備事業者の仕入れ先やその先の卸売事業者までさかのぼって対応したという。担当者はこれまで、整備事業者の取引先との接点がなく、「(整備事業者の)商流にタッチしたのは初めてだった」と振り返る。
事業者の業務にも影響が生じた。BPなどを手掛けるオートワークス雅(熊谷雅宏社長、埼玉県坂戸市)では、全塗装など塗料を多く使う一部の仕事を断った時期があった。また、競合他社で断られたとみられるオイル交換目的の来店が一時的に増えたという。
ただ、仕入れ先との関係が良好だった整備事業者は、影響を最小限に抑えられたもようだ。オートサービス雅の熊谷社長は「仕入れ価格だけを見て取引先を変えるようなことはしなかった」とし、仕入れ先に適切な代金の支払いを続けてきたことが油脂類などを安定的に確保できた一因と見る。和幸工業の五十嵐社長も、「社員に(仕入れ先の)地域部品商を大事にするよう言い続けてきたことが、今回の不測の事態に生きた」と話す。
今後は、本来の供給体制にいつ戻るかが焦点になりそうだ。整商連では「受注制限の緩和による安定供給の早期実現を期待している」とするものの、自動車整備課も「まだ時間はかかるのでは」とみている。中東情勢はいまだ安定せず、複雑なサプライチェーンの中で代替先を見つけるのも難しいためだ。
この経験を踏まえ、自動車整備課は同様の事態が再び起こったとしても、迅速に情報を把握し的確な情報を発信するとしている。
整備戦略11月号では、特集「“足らないもの”は戻ってきたのか」を掲載します。


















