2030年度に国内販売18万台を目指す三菱自動車が、目標達成の鍵を握る新たなクロスカントリー型のSUVを年内に発売する。同社はまだ車名を明かしていないが、19年に国内向けの生産を終了した「パジェロ」を引き継ぐとみられる。18万台には25年度比で6万台近く積み上げなければならないが、それには新たな主力車種が欠かせない。そこで、かつて三菱車の代名詞でもあった〝クロカン車〟に白羽の矢を立てた格好。パジェロの復活で国内事業の勢いを加速させる考えだ。
発売予定の新型SUVについて、岸浦恵介社長は「ブランドの中心となるモデル」と期待をかける。車名にパジェロを用いるかは明言してはいないが、4月上旬に開かれた希少車を集めたイベントで歴代パジェロの展示を企画するなど、同モデルを意識した動きを見せている。
1990年代に起こった四輪駆動(4WD)車を中心としたRV(レクリエーショナルビークル)ブームの中心にいたパジェロは、当時の「パリ・ダカール・ラリー」でも勝ち星を重ね、三菱車のイメージリーダー的な役割を担っていた。最盛期の92年には8万台超を販売するなど、系列ディーラーの屋台骨を支えた。
しかし、RVブームの終わりとともに、ミニバンや乗用車ベースのSUVへとユーザーニーズがシフト。これに対応しきれなかったほか、抜本的な商品改良も後手に回るなどして販売台数が徐々に低迷。2019年8月に国内仕様の生産を終了していた。
ただ、パジェロは40年に迫る歩みの中で、国内にファンが多いのも事実。販売店からも、本格的な走破力を持つクロカン4WD車を求めるユーザーに対応できるモデルを補完する要望も強くなっていた。岸浦社長も「クロカンSUVはわれわれのブランドそのもの」としており、これからの三菱車の販売戦略にとって欠かせないと判断したようだ。
同社の関係者は「主流のクロスオーバーSUVとは一線を画す本格的なオフロード車となる」としている。旗艦モデルとして、上質感を高めた外観にもしていく計画だ。
販売現場の期待も高まっている。ある系列ディーラーの社長は、「パジェロ人気を知る50~60歳代だけではなく、その下の世代も取り込みたい」と意気込む。
ここ数年、三菱自の国内販売は堅調だ。25年度の新車販売台数(軽自動車を含む)は、前年比4.5%増の12万2802台で5年連続のプラス。ミニバン「デリカD:5」や軽乗用車「デリカミニ」がけん引してきた。これらは今も支えているものの、新たな主力車種が育成できなければ30年度目標の達成は難しく、発売前から新たなクロカン車の重責は増している。
岸浦社長は「準備は順調に進んでいる」としているが、トヨタ自動車の「ランドクルーザー」シリーズなど手ごわい競合車がいるのも事実。こうした中で、狙い通りの成果を上げられるか。三菱自と系列ディーラーの力が試されている。
(舩山 知彦)




















