オートバックスセブンが、特定の製品やサービスに集中した“特化型店舗”を相次いで立ち上げている。2025年だけでカーオーディオがメインの拠点のほか、羽田空港内にインバウンド需要に対応した店舗を、中部と九州の既存店の一部にはスポーツパーツコーナーを新設した。この背景には、通常の「オートバックス」の店舗では難しい嗜好(しこう)性の高い製品を求める顧客を取り込む狙いがある。併せて、全国チェーンの強みを生かして来店のハードルを下げ、販売増につなげる考えだ。
「顧客に価値を提供できる店舗であれば積極的に取り組む」と、堀井勇吾社長は特化型店舗に力を入れる理由を説明する。カー用品市場は、長らく縮小傾向にある。同社は根強い補修需要に対応した品ぞろえを強化するなど、逆風下でも効率的な店舗運営で成長路線を維持してきた。ただ、この過程の中で、取り扱う用品類もコモディティー(一般)化が目立ち、本来の稼ぎ頭であったカスタム需要に対応しにくくなっていた。特化型店舗で、こうした需要を掘り起こす考えだ。
この一つが、25年12月にオープンした「オーディオテーラー千葉・蘇我インター」(千葉市緑区)だ。純正品とアップグレード後の音質を容易に比較できる試聴台やデモカーを常設。車種や予算、音の好みに合わせて最適な製品を顧客に提案している。専門性が極めて高く敷居の高いプロショップよりも来店しやすく、通常のオートバックス店の品ぞろえでは満足できない顧客層への対応を目指した。開店から数カ月だが、来店する顧客も徐々に増えているなど、一定の成果が挙がっている。
かつて、カー用品の花形だったオーディオは純正装着が進み、市場規模が小さくなっている。電子情報技術産業協会(JEITA、漆間啓会長)の統計でも、カーAVC関連の国内出荷数が、ここ数年、減少傾向にあることが分かる。オートバックスセブンの堀井社長も「売り上げが下がっているカテゴリーで、市場としてなくなりつつあると思っていた」とみていた。しかし、これまでと異なるアプローチで「実際にはそうではないことが分かった」と、自信をみせる。
オーディオと同様の切り口で攻めているのが、走行性能を高めるスポーツパーツだ。以前のような市場の勢いはないものの、根強いファンが存在する。こうした需要を取り込むため、福岡県と愛知県の一部の「スーパーオートバックス」に、インショップ型の「APIT(アピット)パフォーマンスガレージ」を設けた。ガレージは、オートバックスセブン側がカスタム商品の提案ノウハウなどの販売戦略や人材を提供し、各子会社が運営している。そのため、これまでより踏み込んだラインアップで、顧客増につなげる。
既存店で対応しきれない領域を補う店舗の設置も進める。25年3月には基幹店の「アピットオートバックス東雲」(東京都江東区)のサテライト店となる「アピットオートバックス東雲パフォーマンスファクトリー」(同)を新木場地区にオープンした。特定の車種に集中した品ぞろえとするなど、より深い顧客のカスタム需要に応える。
カー用品そのものに、こだわらない店づくりとしたのが、25年11月に羽田空港の商業施設にオープンした「アピットオートバックスJDMベース」だ。車関連の小物類などを軸にしており、日本車が好きな外国人の旅行客の需要を満たしている。
アピット企画推進部の山添龍太郎部長は「新しいアピットをつくるのが目的」とし、「国内のカスタム需要をガレージで、JDMベースで海外の需要をつかむ」との狙いを話す。
特化型店舗での新たな試みは、通常のオートバックス店の改善も視野に入れている。例えば、オーディオテーラーでは、グループ内外の研修や情報共有の拠点としても活用する計画。さまざまなスタッフが専門的な知識や技術力を身に付けていくことにより、全国規模でオーディオの販売力を高める。インショップ型のパフォーマンスガレージも、既存店の競争力向上に役立つとみられる。JDMベースもオートバックスの認知拡大につながりそうだ。
同社は今後も、エリア特性やターゲット層などに応じて専門業態を展開することで、カー用品小売り事業の持続的成長につなげていく考えだ。
(廣石 真子)



















