2025年12月期の売上高、営業利益が過去最高を記録し、今期(26年12月期)もさらなる増収を見込むトーヨータイヤ。30年12月期までの5カ年新中期経営計画では、戦略投資として3400億円を引き当て、複数の新工場プロジェクトの遂行を掲げるなど、攻めの姿勢を打ち出す。足元では中東情勢の悪化に伴う原材料費の高騰が事業を直撃し、主戦場の米国では関税をはじめとする政策動向も不透明な中、どのようにかじ取りを進めるのか。清水隆史社長に聞いた。
―中東情勢の悪化や米国の関税政策など、足元の外部環境をどう見る
「想定を超えた事態というのが率直な受け止めだ。5月の第1四半期決算説明時点では、中東情勢の悪化を受け営業利益ベースで166億円の影響があると試算した。ところが、以降もコスト押し上げ圧力は強まっている。我慢のしどころだが、急激な原材料価格の変動を単年の取り組みで吸収するには限界がある。2、3年のスパンで情勢を見極めるしかない」
―新中計の目玉に工場新設を掲げた
「計画の一つがトラック・バス用タイヤの新工場。候補地としては米国、セルビア、マレーシア、日本の(すでに工場がある)4カ国だ。トラック用タイヤは乗用車用とは設備も規模も全く異なるだけに、既存設備の活用には限りがある。近隣地での新設が基本線になる」
「とはいえ、(最大需要地の米国への供給に当たり)関税は無視できない。地域次第では関税率が29%にも達する。為替が円安であり続けるかどうかも分からないだけに、計画を見直す可能性もある。当社はフルラインのタイヤメーカーではない。もうからないことはしないのが基本線だ」
―新中計では欧州での地産地消体制確立も打ち出した。具体的な展望は
「かつての当社の欧州販売は年間450万本。それが今は200万本にとどまっている。私が欧州に赴任していた頃、『600-F1』という製品が欧州メーカーからも高く評価され、人気を博していた。ところが会社として米国展開に軸足を移す中で、欧州戦略が手薄になっていった経緯がある」
「市場シェアとしては、あとは上がるしかない状況で、反転攻勢の決め手は(昨年フル生産化した)セルビア工場の活用だ。当初は米国向け輸出を担う拠点として想定していたが、追加関税もあり欧州向けにシフトしようと、メニューも入れ替えてきた。450万本時代は日本から出荷し、納期に5カ月を要していた。これをセルビア生産では2週間に短縮できる。タイヤは季節商品だけに、確度の高い需要予測や在庫リスク低減が可能となることで、確実に販売を伸ばせる」
―欧州では現地販売会社をセルビアに集約するなど販売体制も大きく変えた。今後の取り組みは
「地産地消体制を築き、欧州に根を下ろしたブランドとして信頼してもらうことが先決だ。今後再び軌道に乗れば、ドイツなどに販売拠点を再設置することもあり得るだろう」
―競合がひしめく中で対抗策は
「セルビア工場ではR&D(研究開発)センターを併設し、年末にも竣工する。量産のための加工技術が弱点だった当社にとっては大きな武器になる。欧州の技術基準をキャッチアップすることで、日本など他地域のタイヤ開発にも知見を生かせる。加えて昨年発表した新技術体系『シンク』では、タイヤ開発期間を30年に25年比で半減させる目標を掲げている。従来、当社は商品サイクルが長い傾向にあったが、上市、下市のサイクルを早めつつ、独自色を打ち出していきたい」
―オフロードタイヤ「オープンカントリー」などが好調な北米事業が業績をけん引する構図をどう見る
「例えばトラック用タイヤでは、当社製品は堅牢(けんろう)な構造がプロから評価され、高い市場シェアにつながっている。一方で、今のピックアップ人気などがいつまでも継続するとは限らないし、タイヤメーカーとしては第二、第三の柱を持っておく必要がある。その点でも日本や欧州は重要な市場だ。研究開発のヘッド機能は日本が担いつつ、材料や加工技術は欧州、デザインや商品開発は北米など、各地域の強みを発揮しながら中計の実現を目指していく」
〈プロフィル〉しみず・たかし 1985年3月同志社大学経済学部卒、同4月東洋ゴム工業(現トーヨータイヤ)入社、2010年トーヨータイヤホールディングスオブアメリカズ社長、14年3月東洋ゴム工業執行役員、15年7月常務執行役員などを経て同年11月代表取締役社長。1961年4月2日生まれ、65歳。京都府出身。
(内田 智)

















