トヨタ自動車が、米国で生産するセダン「カムリ」をベースに、1970~80年代に一部で流行した「竹やり」「出っ歯」を施したカスタマイズ車を披露した。公道走行はもちろん想定していないが、昭和のクルマ文化を色濃く反映した改造車は単なるトヨタの「悪ノリ」とは言い切れない。中嶋裕樹副社長は、カムリの改造車について「(開発陣が)自分たちの殻を破って開発することを会社が認める」証左だと胸を張る。
■日米貿易問題で国内復活を果たす
トヨタは2023年、セダン需要の縮小を理由にカムリの国内販売を終了した。ただ、法人客を中心に上位モデル「クラウン」ではカバーしきれないセダンの需要は現在も一定数存在している。日米貿易交渉に端を発した米国生産車の輸入機運が高まる中、カムリの国内“復帰”を決めた経緯がある。
豊田章男会長が率いる「ガズーレーシング」と、中嶋副社長の「トヨタレーシング」が、米国生産カムリのカスタム車で競い合った。6月5、6日にスーパー耐久シリーズ「富士24時間レース」が開かれた富士スピードウェイ(静岡県小山町)で両チームが手掛けた改造車を披露した。
ガズーレーシングが手掛けた車両は、左右に張り出したフェンダーや大型リアスポイラーで走行性能の高さを主張する。パワートレインは車体前方に3気筒エンジン、後方に4気筒エンジンを搭載した「ツインエンジン車」で、合計の最高出力は700馬力に達するという。
■日本の車文化を米国から逆輸入
トヨタレーシングのカムリは、大きく前方に突き出したチンスポイラーと、上方に長く伸びたマフラーパイプが存在感を主張する。車内ではシャンデリア照明やクリスタルのシフトレバーなど、昭和に流行した改造手法を採り入れた。新開発のエンジンをフロントに搭載し、ベース車の前輪駆動から後輪駆動に改造するなど走りにもこだわった。
米国生産車を昭和テイストに改造したのには訳がある。米国では、日本仕様車のことを「JDM(ジャパン・ドメスティック・マーケット)」と呼び、映画「ワイルド・スピード」などの影響で日本車や日本流の改造文化が流行している。また、昭和の過激な改造手法は「BOSOZOKU(暴走族)」として認識されている。トヨタが手掛けたカムリの改造車は、こうした日本の自動車文化を“逆輸入”した格好だ。
■開発したいことに没頭できる環境を
中嶋副社長は、米国生産カムリで改造を競い合ったことについて「(技術者が)成長するために開発したいことに没頭できる環境をつくりたかった」と話し、自由な発想を認めない会社は「生き残れない」と指摘する。海外で評価されている日本の車文化を逆輸入する発想は、世界トップメーカーの懐の深さが故になせる技と言える。
型破りな手法で国内導入をアピールしたカムリだが、トヨタは年間販売台数を1万台とする意欲的な目標を打ち出す。豊田会長は「カムリはファンもいながら、残念ながら今は日本で販売していない。そういう意味では(カムリの輸入で)トレードバランスが多少改善し、関税問題もさらに見直しになるのではないか。関税問題ですべてのステークホルダーが勝者になってほしい」と語った。
(編集委員・福井 友則)



















