マツダが生産終了から久しいモデルのレストア(再生)や、調達が困難になった補修部品を供給するサービス「クラシックマツダ」を行っている。いわば〝旧車〟となったマツダ車の愛好家は少なくないが、安全に乗り続けるには部品の確保が欠かせない。しかし、純正部品でもすでに生産を打ち切っているものも多いことから、復刻や社外品の確保などに力を入れている。将来の生き残りに向けて次世代車の開発や販売にも力を入れる必要がある中、旧車にも目を向ける背景にはマツダ車に長く安心して乗れる環境をつくることで、コアなファンを増やしていく狙いがある。
クラシックマツダの対象は、1989年に発売した「ユーノスロードスター」(NA型)と85年の「サバンナRX-7」(FC型)、91年に「アンフィニRX-7」(FD型)として販売を開始した3モデルとなる。手に入りにくくなった補修部品について、生産状況などの情報提供や復刻を行っている。また、車両のリフレッシュに必要な「推奨交換部品」の周知のほか、ユーザーから車両を預かって新車に近い状態に整備するレストアが主な事業だ。
特に、こだわりを見せているのがレストアサービスで、今はNA型のロードスターのみに対応している。単に再生に向けた作業を進めるだけではなく、顧客と話し合って方向性を定めたり、過程も見せたりしながら、丁寧に進めていく。さらに、仕上げには、現行のロードスター(ND型)の開発主査が走行評価を担当。納車式も開き、顧客との信頼関係を深めることを重視している。
クラシックマツダを担当しているカスタマーサービス本部アフターセールスビジネス推進部の伏見亮アシスタントマネージャーは「マツダ車のユーザーはクルマを起点にした生活をしているケースが多い」としており、「こうしたユーザーとの絆をつなぐためのサービスを意識している」と話す。また、日本は欧米と比べ、旧型車に親しむ風土が乏しいとの指摘もあり、マツダ車の愛好家との関係を強化することで、国内の自動車文化の醸成にもつなげたい考えもある。
とはいえ、オーダーメイドのレストアサービスは時間や手間がかかる。これまでの実績を見ても、約8年で17台にとどまっているのが実情だ。
そこで、力を入れているのが、NA型ロードスターやFC、FD型RX-7の顧客が愛車に少しでも長く乗れるようにするための補修部品の確保と供給だ。これまでも生産を終了する部品を一定数買い取り、在庫を積み上げてきた。しかし、自社で保管できる在庫点数には限りがある。このため、最終生産時にあらかじめ顧客に告知し、必要とするユーザーに届ける取り組みを今年始めた。加えて、NA型では全国の専門ショップに聞き取り、当該部品の需要も確認している。いずれも、必要な補修部品が入手困難になることを少しでも防ぐ狙いがある。
すでに絶版となった補修部品にも、さまざまな対策を講じている。例えば、FD型RX-7のキャニスター(燃料蒸発ガス吸着部品)は、ミニバン「プレマシー」用を一部改造して供給できるよう開発を進めている。また、純正の補修部品を手掛けていたサプライヤー以外でも、絶版となった部品を生産できるメーカーを探す取り組みも実施している。
純正同等の性能や品質が担保できれば形状や製造元は問わないスタンスなのは、まずは社外品も含めて補修部品が過不足なくそろえたいとの思いがあるためだ。社外品が豊富な欧米では、顧客が自ら修理しながら長期間保有しているケースも多いが、国内ではまだ一般的とは言えない。そこで、手に入らない補修部品を減らすことが必要との考えだ。この実現のためには、マツダが図面や仕様などの情報を提供することも検討しているという。伏見氏は「自社だけではリソースの都合上、対応する車種を絞らざるを得ない」とし、「相応の品質であれば社外品でもユーザーが助かる可能性があり、仲間を増やしたい」と話す。
ただ、マツダにとって、大きな利益を生み出せる事業ではないことから、3人体制での運営になっている。小さな組織のため、すぐにできることにも限りが出てくるが、伏見氏は「絆を深めるために続けるべきだし、必要な取り組みだ」と言い切る。
その成果は着実に出ている。10月上旬に富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開かれた「マツダファンフェスタ2025」では、クラシックマツダのブースに古いマツダ車の愛好家が数多く訪れ、熱心に質問する姿があった。また、年齢が車歴に及ばない子ども連れも目立ち、新たなファンの誕生も予感された。最も新しいモデルでも生産終了から20年以上たつ。マツダ車の歴史を体現する名車を少しでも残していくために、今後も活動を続けていく考えだ。
(中村 俊甫)



























