説明会の模様(5日、都内)

 豊田通商は、主力とするアフリカ関連事業の売上高を現在の約1.6兆円(2025年3月期)から10年後に約3倍となる約4.5兆円へと伸ばす方針だ。現在の柱は自動車のノックダウン(KD)生産や販売など「モビリティ分野」だが、再生可能エネルギーなどの「グリーンインフラ」やヘルスケア、小売り(コンシューマー分野)を合わせた4本柱として強化。分野間のシナジーも見込んで事業拡大を目指す。

 今月下旬に横浜で予定されている第9回アフリカ開発会議(TICAD9)を前に、アフリカ事業の説明会を5日、東京都内で開いた。同社はアフリカ事業を手掛ける商社の先頭ランナーで、12年に西アフリカに自動車販売網を持つ仏系の大手商社「CFAO」を子会社化後、19年には南アフリカの自動車販売大手を買収し、トヨタ自動車のアフリカ事業の一部移管も受けた。この結果、今ではアフリカの全54カ国で事業を展開。172の事業体と約2万3千人の従業員を抱える。

 事業の柱であるモビリティ分野では、自動車やトラック、二輪、タイヤ、建設機械などの輸出入・販売のほか、現地でのKD生産、生産支援、メンテナンス・アフターサービス、MaaS(サービスとしてのモビリティ)事業などを展開している。

 アフリカ全体でみると、自動車の所有率はまだ数%というが「まずはモータリゼーション(自動車の大衆化)が進み10%台になる」(アフリカ本部の大塚慎一郎COO)と見る。こうしたことから、販売を含めたモビリティ事業のさらなる成長を見込む。

 大塚COOは当面、内燃機関車(ICE)やハイブリッド車(HV)が先行すると予測する。電気自動車(EV)については、充電インフラの整備など難しく、普及は先になるとみている。

 アフリカ事業の売上高3倍を目指す中で、モビリティ以外の事業も強化していく。グリーンインフラの柱である再生可能エネルギー事業では、太陽光発電や風力発電など「ポテンシャルがまだまだ大きい」(同社)という。アフリカ専門の再エネ企業「エオラス」を24年3月に立ち上げ、意志決定を早めるなどして事業を強化していく。

 ヘルスケア分野も強化する。今月にはその一環として、東アフリカ最大の薬局チェーン「グッドライフ」を完全子会社化すると発表。グッドライフはケニアとウガンダを中心に約150店舗を展開し、店頭販売に加え、eコマース(電子商取引)や宅配サービスなどを通じ、200万人以上にヘルスケアサービスを提供しているという。大塚COOは「こうしたヘルスケアやコンシューマー関連の事業は、顧客のデータやサービスの届け方も含め、モビリティ事業との親和性、シナジーも想定できる」と話す。

 10年後の売上高比率としては、モビリティ分野で5割前後、グリーンインフラやヘルスケアが2割前後、コンシューマーが1割前後を想定しているという。

 日本政府主導のアフリカ開発をテーマとするTICADに、同社は継続して参加している。19年開催のTICAD7では、民間企業が初めて公式なパートナーと位置づけられ、投資促進に向けた民間の役割がますます重要になっている。同社は、各国政府との関係強化やプロジェクトの組成・推進などの機会として積極的に関わっている。

 今回のTICADでは「地球に優しいグリーンな事業展開を通じて、アフリカの持続可能な社会の実現に貢献」「高品質な医薬品へのアクセス確保を使命に、健康な社会の実現」「現地の人々の雇用創出や産業人材の育成に貢献」といった姿勢で臨(のぞ)み、関連展示会では企業として最大規模となるブースを出すなどする。多くのMOU(基本合意)も結ぶ予定だ。

 同社は「これらは方針として打ち出すだけではなく、しっかりと結果を出していく。当社は多くの商社が北米や中国に着目していた当時から、アフリカにリソース(経営資源)を投入し、〝面〟として事業を進めてきた。アフリカに貢献するとともに、先行者利益を確保していく」としている。