オートロマンがレストアしたフェラーリ「355GTB」
コーンズのザ・マガリガワ・クラブのパノラマ
マセラティジャパンはグランカブリオを展示
F1マチックからMT化した

 富裕層の増加を受け、輸入車を取り扱う事業者のビジネスが活発になっている。新車では、高性能スポーツ車をはじめ高価格帯のモデルが伸びている。こうした顧客を取り込もうと、本格的なサーキットを設けた会員制施設を運営しているところもある。現在、注目を浴びている夫婦共に高い給与を得ているような〝インカムリッチ〟層をターゲットにした施策を打つインポーターもいる。また、新車だけではなく、〝旧車〟に目を付ける事業者も出ており、あの手この手で多様な富裕層のニーズを吸収しようとする動きが加速している。

 コンサルティングなどを手掛ける野村総合研究所の推計では、純金融資産保有額が1億円以上の世帯は2023年に165.3万世帯と、前回の21年から11.3%増加。富裕層が増加傾向にあることを裏付ける。日本自動車輸入組合(JAIA、ゲルティンガー剛理事長)がまとめた2024年度の外国メーカー車の新規登録台数のうち、「1千万円以上」は前年比6.5%増の4万524台で10年連続のプラス。ボリュームゾーンの「400万円以上1千万円未満」(同1.8%増の14万2914台)の伸び率を上回った。

 上級車にシフトする傾向は、輸入車業界でも重要視しており、4月11~13日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開かれたオートモビルカウンシルでも、数千万円台の旧車も並んでいた。

 こうしたヘリテージカーを取り扱うオートロマン(諸井猛社長、群馬県大泉町)は、1999年式のフェラーリ「355GTB」をレストア(再生)して出展。もともとはステアリングのパドルシフトで変速可能な「F1マチック」装着車だったが、手動変速機(MT)化。MTを好むユーザーの声に応えた。同社では実際に世界で戦ったレーシングカーなど、富裕層が好む在庫をそろえている。諸井社長は「日本人に加え、円安の影響もあり、中国やドバイの富裕層からも引き合いが強い」と、グローバルでの販売拡大にも力を入れる。

 さまざまな上級ブランド車のディーラーを手掛けるコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド(渡謙作社長、東京都港区)は同イベントで、千葉県南房総市で運営している会員制ドライビングクラブ「ザ・マガリガワ・クラブ」のパノラマを展示した。

 この施設は峠道のような勾配や22カ所のコーナー、理論上時速280㌔㍍で走行できる800㍍のストレートで構成した全長3.5㌔㍍のコースを備えており、2023年7月にオープン。現在の関係費用は非公開だが、開所直前の発表によると、正会員は入会費が3600万円で、年会費22万円。これまで約10回にわたり募集をかけたが、いずれも申し込みが殺到したという。展示ブースにも初日午前中から入会希望者が訪れるなど、富裕層の目を引いていた。

 新たな層の獲得を目指しているのが、マセラティジャパン(東京都港区)だ。木村隆之社長は「キーワードは『資産リッチからインカムリッチ』」とし、世帯収入の高い給与所得者の取り込みを狙う。これまでの主要顧客層は会社オーナーや医師、弁護士ら「雇う側」「個人事業主」だった。ターゲットを広げた営業戦略で、新規客を増やしていく考えだ。

(種市 房子)