決算会見で説明する内田社長

日産自動車の経営危機の再燃が懸念されている。主力市場である中国での新車販売不振や米国での収益悪化で、2024年4~9月期連結業績は営業利益が前年同期比90%減の329億円と大幅減益となり、通期予想も前四半期に続いて下方修正した。8カ月前に策定したばかりの中期経営計画で26年度までに販売台数を100万台増やすとした計画は早くも撤回。新たにグローバルで生産能力の2割削減や人員を9000人削減するリストラ計画を策定した。三菱自動車の保有株式の一部も売却するなど、足元の財務改善を急ぐが成長戦略は描けていない。経営の混乱から脱したかに見えた日産だが、真の再生に向けて正念場を迎えている。

日産固有の問題

日産が業績不振となったのは、ほとんどの日系自動車メーカーが苦戦している中国に加えて、米国事業の収益が悪化している影響が大きい。4~9月の北米販売は同1%減と微減だったが、販売競争の激化で主力モデル「ローグ」などのインセンティブ(販売奨励金)が上昇しており、4~9月期の営業利益でも1945億円の減益要因となった。

内田誠社長CEOは、業績悪化の原因について、台当たり収益の低さや販売目標と実績の乖離、タイムリーに人気モデルを投入できなていないなど「日産固有の問題がある」と説明。工場の低い稼働率が続き、固定費が増加、在庫を削減するためのインセンティブの積み増しなどが収益を圧迫している。

先行きも厳しい。米国で人気が高まっているハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の投入が遅れている。PHVやシリーズHV「eパワー」のモデルを投入する計画があり、前倒しを検討しているものの、時間を要する。もう一つの主力市場である中国も地場系メーカーが電気自動車(EV)やPHVの販売を伸ばしており、競争激化で日産の販売は当初の想定以上に落ち込む見通しだ。

今期のグローバル販売見込みは、3カ月前の予想から25万台引き下げて340万台に下方修正し、前年実績を下回るレベルにまで落ち込む見通しとなった。

短期的な販売てこ入れが難しいのに加えて、日産にとってはコスト低減による収益力アップも今春に取引先に対する下請法違反で勧告を受けたことがネックとなって難しい。日産と取引のあるサプライヤーは「納入価格の値上げ要請をスムーズに受け入れてくれるようになった」という。

4~9月期の営業利益の増減益要因として、インフレ影響で713億円の減益要因があった。このうちモノづくりが586億円だ。これ以外にも、モノづくりコストのその他の減益要因として324億円の影響があった。