創業96年の独立系部品メーカー、三五。既存の排気系やボディー系部品、精鋼製品で新製品を開発するとともに、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に貢献する建築用配管「FP35」といった新規事業にも力を入れる。創業家以外から初のトップに就いた水野昭智社長に今後の戦略を聞いた。

 ―就任の抱負は

 「当社は恒川鉄工所から始まり、創業家出身の社長が事業を大きく成長させてきた。現在は『マフラーの三五』から『環境の三五』へとドメインを変える過程にある。私は営業部門出身の社長として、お客さまの情報をスピーディーにキャッチし、社内に展開する役割を果たす。今秋には2040年を見据えた長期ビジョンを発表する。ビジョンを社内に浸透させ、将来への道しるべとしたい。働く環境を整備し、皆が話し合える場所づくりも進める」

 ―足元ではハイブリッド車(HV)が人気だ

 「HVやプラグインハイブリッド車(PHV)がトレンドになっており、中国メーカーもPHVに力を入れている。クオーター(四半期)ごとに状況が変わっていくので読みが非常に難しい。昨年や一昨年は『25年に内燃機関車がピークアウトする』という前提のもと、大型プレス部品などに投資してきたが、ピークアウトが遅れる中、残っていく部品もしっかり伸ばしていく必要がある」

 「トヨタ自動車が4気筒のエンジンを開発しており、グローバルに展開する『TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)』のエンジンも今後、置き換わっていくだろう。エンジンの小型化に伴い、排気系もコンパクトにするなど、エンジンの変化に合わせた開発が必要だ。欧州の環境規制『ユーロ7』やeフューエルへの対応など、排気屋としてするべきこともまだ多くある」

 ―インドへ投資を進める

 「ポテンシャルのある国であり、拠点として伸ばしていかないといけない。これまで南部にレンタル工場を構えて生産対応してきたが、トヨタの工場拡張に伴い、自前の工場を構えて生産する。トヨタが同国西部に建設する新工場にも対応していく。ブラジルなど、排気系が必要な地域は他にもある。自社工場だけでなく、各地域で技術援助をしながら、その工場でわれわれの製品を生産してもらうといった生産対応も行う」

 ―ボディー系部品では、ハイテン材の活用が進む

 「ハイテン材やパイプを使った部品の軽量化に取り組んでいる。すでに受注しているダッシュパネルなどの部品とは別に、造管から一貫生産できる強みを生かした新製品も開発中だ。高いシェアを持つドアビームも、側面衝突への対応で強度を上げる必要があり、パイプを厚肉にするなどして厳しい要求性能に対応していく。精鋼製品では、モーターの高速回転に対応したシャフトといった電動化部品にも取り組んでいる」

 

〈プロフィル〉みずの・あきち 1990年三五入社、精鋼営業管理部長、常務執行役員兼精鋼営業部長、専務取締役などを経て、2024年6月から現職。1963年4月生まれ、61歳。愛知県出身。趣味はゴルフ。

(堀 友香)