出張などで数日会社を空けて日誌がたまっても返事を欠かさない

 2025年1月に創業60周年を迎える定光鈑金(定光純一社長、岡山市南区)は、本社のほか、県内に3支店を開設している大手車体整備事業者だ。社員数は31人で、このうち24人が整備と板金塗装(BP)の作業に従事しており、整備で月間約400台、BPで同300台の入庫に対応している。

 定光社長は「自動車整備業界は人がすべてで、人材育成に注力することが利益拡大に結び付く」と考え、地道に取り組みを続けてきた。きっかけとなったのは、23歳の時に取引先の塗料販売店から「次世代の経営者が勉強する集まりをつくるので参加しないか」と声を掛けられたことだ。その勉強会で「会社は人の集まりであり、社員が喜んで働ける環境でないとお客さまの心をつかむ仕事はできない」ことを学び、従業員満足(ES)を上げることを実践してきた。

 しかし、定光社長のこうした思いはなかなか社内に浸透せず、何がいけないのかを考えると、「朝、あいさつを交わした以外に会話がないことに気付いた」(定光社長)という。他社に負けない強い組織風土をつくるには、互いの信頼関係が大切であると考え、社員が今日1日、どのような仕事を行ったかを報告する業務日誌を25年前にスタートさせた。今では悩みの相談や不満などが書かれていることもあり、定光社長も毎回返事を記すなど社員との「交換日記」となっている。

 このほか、中小企業家同友会が催す研修「幹部社員大学」に幹部社員を参加させ、異業種との交流を通じて刺激を受けることで成長を促している。参加した幹部社員は、発言が前向きになり部下の育成など会社のことを考えた仕事を行うようになるなど「幹部として大切なスキルが身に付いた」(同)と成長を感じている。

 働き方改革にも取り組み、勤務体制や給与の見直しも行った。また、人材を確保するため外国人採用にも力を入れている。現在は7人のベトナム人が在籍しており、単身者用の寮を用意したほか、妻子を呼び寄せ家族も滞在できるように中古の一軒家を購入。外国人留学生が長く働ける労働環境の整備も進めている。

 定光社長は「業界や地域の方々から、岡山県に定光鈑金がなくてはならないと思ってもらえるようになりたい」としており、今後も人材育成の取り組みに力を入れていく方針だ。

 〈受賞コメント〉

 定光 純一社長

 社員たちと出会えて仕事ができることに感謝している。60年前に会社を始めたときは1拠点だったが、現在は本社のほかに3拠点を構え、社員数も31人になった。板金塗装の業界では岡山県で一番の事業規模の会社になることができた。今後も社員とともに成長し、誰に来て見ていただいても「すごい」と言ってもらえる会社でありたい。

(関西支社・岸田 正幸)