軽自動車も含め、懐かしの名車が並ぶ

 中根モータース(中根達人社長、岐阜県土岐市)は、ベテラン社員の技能継承と若手社員の技術力向上を目的に、車のレストア(再生)に取り組んでいる。これまでレストアしてきた車は、同社と関連会社が運営する駄知旧車館(中根眞人館長=同社会長)で展示している。展示車はどれも完成度が高く、同館は観光の目玉になっている。同時に、地元ならではの展示で出迎える、地域の憩いのスポットだ。

 できるだけ多く実車に触りたい―。成長を望む若手社員の要望で、同社のレストアの取り組みが始まった。同館での展示も、初めは20台だったが、現在は60台を超える。貴重なモデルも含まれるため、車好きにとって、いつか訪れたい憧れの場所になっている。

 展示している車両の中には、クラシックカーの愛好家や地元のユーザーから寄贈された車もある。個人では車両を傷めずに保有していくのが難しいが、同館に贈ればきれいな状態でまた会える。いつまでも愛車を大切にしたいというユーザーの思いに応える形で、現在も同社へのレストアの依頼や寄贈が増えているという。

 同館の地元とのつながりの強さは、自動車以外の展示からあふれる地元愛にも表れている。同館がある同市駄知町には、美濃焼の窯元が集積している。近隣の窯元で作られた焼き物や同市出身の芸術家の作品などが飾られ、町自慢の品々で多くの観光客を呼び込む。さらに、地元のスポットや名産品などを取り上げて作った「ご当地かるた」にも同館が取り上げられ、地元のイベントで観光スポットとして紹介マップに表記されるなど、地域の人々にとっても大切なスポットとして定着している。

 展示車両をレストアする同社も、地元への貢献を望む思いが強い。地域の小、中学校への書籍の寄贈や学生の職業体験の受け入れ、防犯パトロールへの参加など、積極的に取り組んでいる。中根社長は「当社のお客さま、スタッフ共に地元の人々だ」とし、「私たちは地域に育てていただいた。これからも恩返しのつもりでしっかりと貢献していきたい」と、決意を新たにしている。

 〈受賞コメント〉

 中根 達人社長

 賞をいただくことになるとは思わず、驚くと同時に喜びを感じた。授賞式の会場で他社ともつながりができ、とても良い刺激を受けられたと思っている。完成したレストア車両は現在も増えており、社員のモチベーションアップにもつながっている。今後は工場に地元の子どもを招き、レストア中の車を公開したり、作業内容を説明したりと、やりがいや楽しさを訴求できる取り組みに発展させていきたい。

(中部支社・春田 茉里)