実務経験を積みながら自信とスキルを身につける利用者
小林誠理事長(右)と施設の管理を担う花田則貴さん

 札幌市で医療や介護事業などを展開する社会医療法人豊生会グループ(星野豊理事長)の就労継続支援B型事業所「Dファクトリー」は、自動車整備を通じた障害者の自立支援に注力している。国家二級自動車整備士の資格を持つ2人が職業指導員となり、就労を希望する人たちの社会進出を支援している。

 Dファクトリーは、同型で道内初の自動車整備部門を持つ事業所として2021年6月に開設した。同年10月に認証工場を取得し、分解整備にも対応した。事業所名の「D」には「Dream(夢)」「Departure(出発)」「Drive(運転)」「Discovery(発見)」という意味を込め、利用者の自立に向けた道筋を示している。

 同グループで施設の運営を担うニルスの会の小林誠理事長は「当施設を利用することに不安を感じる人も少なくない」とした上で、「そうした人たちにも敷居は決して高くないことを知ってもらいたい」との思いを打ち明ける。また、「私たちが手本となり、全国に波及させていければ」と力を込める。

 利用者の多くは車や工具が好きで、日々、整備について学んでいる。小林理事長は「自信を持ってもらえるよう、何らかの資格を取ってもらいたい」とし、次のステップとして国家三級自動車整備士の資格取得を目指している。しかし、現行制度では難しいのが現実だ。それでも「胸を張って今後の人生を歩んでいけるよう、しっかりとサポートしていく」と、さまざまな課題解決に意欲的に取り組んでいく方針だ。

 こうした活動が地元の整備工場や自動車リサイクル事業者の注目を集め、見学希望者が徐々に増えているという。見学者からは「作業に取り組む前向きな姿が素晴らしい」と好評を得ている。ただ、こうした人材を実際に企業が受け入れるには、「送迎に関わる人員が不足している中で、どう対応するか」といった課題もあるという。

 現在、リサイクル事業者からの委託で、ヒューズボックスやワイパーのモーターの分解、アルミホイールの洗浄などの軽作業を行っている。利用者はこうした実務経験を積み重ねながら、整備の技術を学んでいる。一人ひとりの自信にもつながっているようだ。今後も、地域との連携を強化し、障害者の社会参加に力を入れていく考えだ。

〈受賞コメント〉小林 誠理事長

 この度はダイバーシティチャレンジ賞という大変素晴らしい賞をいただき、とてもうれしく思っている。当法人は障害者福祉の事業所だが、このような機会をいただけたことに感謝している。

 今回の受賞に満足することなく、法人としてさらなる成長を目指し、障害者就労に向けた大きな一歩となるように取り組んでいく。当法人の柱の一つでもある地域共生社会の実現に、より一層取り組み、今後も地域貢献や社会貢献ができるよう精進していきたい。

(友田 昭人)