会見で陳謝する三部敏宏社長(中央)

ホンダは6月3日、過去に販売した車両の認証試験で不適切事案があったと発表した。「騒音試験」や「原動機車載出力試験」で試験条件の逸脱や実際と異なるデータの記載などの不正があった。対象車種は22車種で、累計販売台数は325万台(一部重複あり)。社内の技術検証や実車試験の結果、いずれの項目も法規の基準は満たしているという。三部敏宏社長は「遵法性の意識に大きな問題があった」と述べ、認証業務のデジタル化などの再発防止策に着手する方針を示した。

ダイハツ工業などの認証不正を受けて国土交通省が自動車メーカーなどに指示した社内調査でわかった。国交省は過去10年の試験を対象としているが、ホンダは社内規定で車種によって最長15年分のデータを保存しているため、2009年4月~24年1月までの認証試験を調査した。

その結果、騒音試験と原動機車載出力試験でそれぞれ2件ずつの不適切事案が発覚した。騒音試験は規定に対してより厳しい重量で試験を実施する一方で、試験成績書に規定範囲内の数値を記載していた。対象車種は63型式で累計販売台数は約264万台。規定よりも厳しい重量に設定していたのは、試験実施後に設計変更などに伴って重量が変更する場合があるため。あらかじめバッファーを持たせることで、再試験の工数を増やさないようにしていた。このため、車両性能自体には問題がないという。

一方、原動機車載出力試験(電動機最高出力および定格出力試験)では、試験結果の出力値とトルク値を書き換えて試験成績書に虚偽記載した。試験結果と諸元値に差が出たが、諸元値に対する差がわずかだったため、ホンダは「性能のばらつきの範囲内である」と判断してしまったという。対象は8車種23型式。累計販売台数は約127万台。対象の8車種のうち6車種は諸元値よりも上振れた試験結果を低く書き換えており、性能を高く見せる意図はなかったものの、追加解析の工数が増えることを避けたという。

また、同試験では発電機を作動させた状態で試験すべきところ、別の同一原動機試験で得られた補正値を用いる不正もあった。対象は4車種9型式。累計販売台数は約44万台。

ホンダは、他の自動車メーカーに先駆けて開発と認証部門を独立させるなど、不正が起きない仕組みづくりに取り組んできた。ただ、今回発覚した事案は「『ばらつきの範囲内であれば性能には影響しない』『ワーストケースでやれば法規は満たす』という誤った判断があった」(三部社長)とコンプライアンスへの認識の欠如で発生した。今後は人材教育を徹底するとともに、型式指定審査に特化した監査組織の発足や試験結果を自動で入力する認証システムの導入などで再発防止を図る。