会見では「信頼」という言葉を繰り返した。自動車保険金の不正請求発覚後、街路樹の枯死や下請法違反など消費者からの信頼を損ねる行動が相次いで表面化した。「ウィーカーズ」の発足を契機に「お客さまを第一に考える組織に生まれ変わる」と宣言した。

 伊藤忠ではゴム・タイヤ関連事業に長く携わり、欧州でタイヤの小売りや車両整備を手がけるクイック・フィット社のトップも務めた。「8千人規模のクイック・フィットでコツコツと改革を進めた。コンプライアンス(法令順守)違反撲滅に向けた経験と知見を有している」との声もある。

 「組織の風土改革が(再生に向けた)一丁目一番地」と強調する。不正発覚前、ビッグモーターには約5500人の従業員がいたが、現在は4200人ほどに減った。残った社員には「家族や友達に胸を張って仕事の内容や会社名を言えなくなっているのは良くない。一緒に胸を張れる会社にしていこう」と呼びかけたという。

 やり手の商社マンらしく、「現場で汗をかいて、会社を変えていく」と現場を重視する。消費者からの厳しい目線も予想されるが「われわれの経営となった店舗にぜひ足を運んでほしい」と語った。信頼回復を急ぎ、〝開かれた中古車販売店〟を目指す。

 

たなか・しんじろう 1985年3月早稲田大学法学部卒、同年4月伊藤忠商事入社。ゴム・タイヤ部門や生活資材・化学品部門を経験。2018年4月執行役員、19年3月ヨーロピアンタイヤエンタープライズCEO(最高経営責任者)。24年5月ウィーカーズ社長。1963年3月生まれ、61歳。

(舩山 知彦)