イーロン・マスクCEO
サイバートラックの生産ライン
モデル3
大型電気トラック「セミ」の工場建設予定地

 電気自動車(EV)大手のテスラは、オンラインで2024年1~3月期決算の質疑応答を行った。新車販売の落ち込みが響き4半期ベースでは約4年ぶりの減収となる中、自動運転タクシーの事業展開や低価格モデルの投入計画などが質問された。

 ―〝2万5千ドルカー〟の発売時期は

 ラース・モラヴィ執行副社長(車両開発担当)「イーロンがすでに言及したが、将来の車両ラインナップの更新に向けて〝低コスト車〟の立ち上げをより効率的な設備投資によって加速させる。当社の使命は、顧客に最も手頃な価格の車両をできるだけ早く提供することだ。これらの新型車は、まず既存ラインの余剰能力を使って生産する。多額の設備投資を行う前に、生産設備をフル稼働させるよう計画を見直した」

 イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)「この件は8月8日に詳細を公表する。その内容は自律運転の課題解決の方法や、これを大規模なフリート(自動運転タクシー)に適用することが骨子だ。そしてドライバーが同乗しない完全自動運転車が実現すれば、史上最大の価値を生み出すことになるかもしれない」

 ―完全自動運転タクシーについて、米国の認証取得プロセスと安全基準をどのように受け止めているか

 モラヴィ執行副社長「すでに自動運転車の法規を制定した州が複数あり、これらはドライバーレス自動運転車の実用化に前向きだ。こうした州と進行中の作業や、当社が提供しているデータが、米国で広範な認証の道を開くことになることを期待している。他の国々でも同様になることを望む」

 マスクCEO「他の自動運転開発企業が規制の〝ジャングル〟を切り拓いていることが実際、かなり役立っている。彼らはサンフランシスコ(米カリフォルニア州)などで一定期間運用しており、統計的に有意義な量のデータがある。自動運転車が人間が運転する車よりも安全だという明確なデータがあれば、重要な規制障壁は存在しなくなると思う」

 「私見だが、自動運転はいずれエレベーターと同じようになるだろう。エレベーターは以前、自動では動かず、人がリレースイッチを操作して動かしていた。その人が疲れたり、酔っ払ったり、単にミスをしたりすると、階層の間で誰かを〝半分に折りたたむ〟ことがあった。しかし、今はボタンを押すだけで何も考えずに希望の階へ行ける。いずれは自動車も同様な操作方法になるだろう。電話で車を呼び出し、乗り込み、目的地に行き、降りるだけというように」

 「さらに私が明確にしたいことは、テスラがフリートを運営するということだ。業態はAirbnb(エアビーアンドビー、民泊のマッチングサイト)とウーバーを組み合わせたようなものだ。当社がフリートを運営し、そこで使う自動運転タクシーの車両をユーザーから貸与してもらう。ユーザーは自分が使わない時だけ車両を貸与し、貸与はいつでもやめられる。貸与した車は利用者を特定の人だけに限定できる。当社の事業展開では、契約するフリート車両の数を1年後に700万台、その後1千万台とし、10年後には世界中で数千万台を目指す」

 ―完全自動運転車の安全技術の開発状況は

 アショック・エルスワミーディレクター(自動運転ソフト担当)「当社は、週単位で安全性を検証する複数のプロセスを構築している。数百本のニューラルネットワークを訓練しており、さまざまな車の運転方法や軌跡を生成することができる。これらは、すでに自社で、もしくはユーザーから収集した数百万の実例を参照してリプレイされる。さらに、シミュレーションシステムでもこれを再現し、クローズドループの方法でテストする。もちろん、実験には時間がかかる。トレーニングに数週間、数千万のビデオクリップを収集して処理するのも数週間ほどだが、実際の過去の傾向に基づき将来の進展を予測できる。これらの予測は、過去のデータに基づき正しいことがわかる」