次期社長に内定した舩曵真一郎氏(左)と現社長の原典之氏

MS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)は4月26日、原典之社長(68)が会長に就き、同社執行役員で傘下の三井住友海上火災保険の舩曵真一郎社長(63)が社長に昇格する人事を発表した。6月末の株主総会を経て正式に就任する。舩曵氏は三井住友海上の社長を兼任する。同HDの柄沢康喜会長(73)は退任する。

ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)の自動車保険金の不正請求問題を受けて、損保業界では大規模な自動車販売店などの乗合損保代理店への「過度な本業支援(便宜供与)」の見直しが喫緊の課題になっている。

同日夕方の会見後、舩曵氏は「今後は必要な台数以上の車の購入や、保険に関係ない週末のイベントのお手伝いなどはやめさせていただく」とした。ただ、「こういうものは損保側から営業のために働き掛けてきたもので、自分たちが反省しなくてはいけない」とも語った。

損保業界の構造的課題を話し合う金融庁の「有識者会議」で、大規模な乗合損保代理店を管理監督する組織として「自主規制団体」の設立を求める声が多く出ている。この点について舩曵氏は「スピード感を優先していくという意味では『自主規制団体』は必要な選択だ」と述べた。

また、同HD傘下のもう一つの中核事業会社である、あいおいニッセイ同和損害保険との統合については「将来に向けた統合は今までも選択肢にあるし、今後も大きな選択肢として存在していくことに変わりはない」とした。

伊藤忠商事などの3社連合に買収されることが決まったビッグモーターの新会社が5月1日に発足するが、今後の保険取引については「まず先方から話があれば対話するが、きちんと(保険販売の)体制ができているかなどをこちらで確認した上で検討していく」と、慎重な姿勢を示した。

この時期の交代になったことについて、同HDの原社長は「23年度決算で最高益(純利益3500億円)を見込めるめどがついたこと、(ビッグモーターなどの不祥事から)ビジネススタイルを大きく変えないといけないことから世代交代をしようと思った」と述べた。

舩曵 真一郎氏(ふなびき・しんいちろう) 1983年神戸大学経営学部卒、住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。17年MS&AD HD執行役員、21年4月三井住友海上火災保険社長。1960年5月生まれ、63歳、東京都出身。