独ZFは、2026年末までに世界で約180億 ユーロ (約3兆円)を投じ、次世代技術の開発・生産を強化する。電動化とソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)関連に経営資源を集中させる一方、受動安全製品や自動運転シャトルバスの製造事業からは手を引く。次世代車の中でも自社が強みを生かせる領域に特化する。25年末までにグループで60億 ユーロ (約9800億円)のコスト削減も目指していく。
27日、来日した同社のホルガー・クラインCEO(最高執行責任者)が事業方針を明らかにした。総投資額の6割近い106億 ユーロ (約1兆7千億円)は研究開発費とする。SDVと車両構造の進化に欠かせない高性能車載コンピューター「プロAI」は今年10~12月期にポーランドの工場で生産を始める。数百万ユニットを量産し、乗用、商用を問わず採用を目指していく。
残る70億 ユーロ (約1兆2千億円)超は、工場や設備などへの投資に充てる。モーター向け電子部品を製造するチェコのクラーシュテレツ工場は、太陽光発電と再生可能エネルギーを活用する同社初の「ゼロ・エミッション工場」に改装した。同工場をモデルに全世界の工場の環境負荷低減に取り組む。
同社は、eアクスルを筆頭に乗用車から大型トレーラーまでさまざまな電動化製品を手がける。ただ、足元では電気自動車(EV)販売が伸び悩んでおり、プラグインハイブリッド車(PHV)やハイブリッド車(HV)など「ブリッジとなる技術」(クラインCEO)が一定程度、需要を得ると想定する。このため、同社もEVからHVまで、需要に合わせて柔軟に製品を供給していく方針を示した。
投資と並行し、25年末までにグループ全体で1兆円近いコストを削減する。エアバッグやシートベルトなどの受動安全製品事業は新会社として切り出し、新規株式公開(IPO)を目指す。多額の投資が必要な自動運転シャトルバスの製造からも撤退する。
労務費の高騰やEVの伸び悩み、自動車メーカーの電動製品の内製化など、サプライヤーを取り巻く環境が変わる中、車載コンピューターとソフトを駆使したシャシーの統合制御など、強みが生かせる分野に事業を絞り、利益を伴う成長を目指す考えだ。