【イラプアト市(メキシコ)=織部泰】マツダが協力して設立したメキシコの日本人学校が2019年の開校から今年4月で5年が経過する。現地に進出する日本の製造業を中心に、駐在員の子どもが通ってる。学校の運営資金は、授業料にあたる会費のほか、保護者を駐在員として派遣する企業も協力している。設立に協力したマツダだけでなく、駐在員を派遣する他の日本企業も運営資金面で援助している。日本を離れた異国で働く駐在員の生活を、企業が一丸となってサポートしている。
メキシコ国内には日本人学校が3校ある。このうちの1校が、グアナファト州イラプアト市にある「グアナファト日本人学校」で、州内唯一の日本人学校となる。
メキシコには、日本の自動車メーカー4社が生産工場を構える。このうち、トヨタ自動車とホンダ、マツダの3社は、メキシコの中央高地に位置するグアナファト州に工場を擁する。周辺にはサプライヤーも進出しており、同校は自動車メーカーやサプライヤーの現地工場で働く駐在員の子どもが通うケースが多いという。今井厚志校長は「設立から協力してもらっているマツダをはじめ多くの企業などからサポートしてもらっている」と話す。
学校は、小学1~6年の小学部と、中学1~3年の中学部で構成する。児童・生徒合わせて59人(1月時点)が在籍する。日本の学習指導要領に準じたカリキュラムを用意しているが、「日本の学校の勉強だけでなく、在外であることを生かしてメキシコを学べる機会も設けている」(今井校長)という。通学する児童の1人は「友達がいっぱいいて楽しい」と笑顔で話していた。
ただ、メキシコでは、治安の悪化が深刻な社会問題となっている。現地に進出する企業の関係者は「10年前と比べて明らかに悪化している」と口をそろえるほどだ。このため同校では、地元警察の協力によって治安を維持しており、駐在員の子どもが安全に学校生活を送れる環境を整えている。
立地や人件費の低さなど米国市場向けの供給拠点として魅力的なメキシコだが、日本人がメキシコで安心して活動するためには、企業だけでなく地元の協力体制も不可欠なのが実情といえる。