トヨタ自動車の豊田章男会長は30日、トヨタ産業技術記念館(名古屋市西区)で新たに策定したグループビジョンを説明した。技術革新で自動車産業がモビリティ産業へと変革する中、新たなビジョンを示してグループの結束力を高める。また、トヨタグループで不正が相次ぎ発覚している問題について、豊田会長は「お客さまをはじめステークホルダーの皆さまにご迷惑、ご心配をお掛けした」と謝罪した。

 同日、トヨタグループ各社トップや現場責任者をトヨタ産業技術記念館に集め同ビジョンを示した。豊田会長はグループの現状について「原点を見失っている」と話し、新たなビジョンは「次の道を発明しよう」とした。「発明」はグループ創始者の豊田佐吉氏が1890年に「豊田式木製人力織機」を発明したことにちなんだ。豊田会長は「グループの原点は多くの人を幸せにするために、もっといいものを作ること、すなわち『発明』にある」と説明した。

 グループ各社の従業員一人ひとりが持つべき心構えとしては「誰かを思い、力を尽くそう」「仲間を信じ、支えあおう」「技を磨き、より良くしよう」「誠実を貫き、正しくつくろう」「対話を重ね、みんなで動こう」の5つを掲げた。豊田会長は「主権を現場に戻す」と強調し、問題が生じれば必ず立ち止まり原因究明にあたる「現地現物」をグループに浸透させる。

 グループビジョンの説明は佐吉氏の誕生日である2月14日を予定していたが、グループ会社で不正が続いていることから前倒しして公表した。豊田会長はビジョンについて「迷った時に立ち戻る場所だ」と語った。