(左から)上川陽子外務相、ヴァルディス・ドンブロフスキス欧州委員会上級副委員長兼貿易担当欧州委員、西村康稔経済産業相

 日本と欧州連合(EU)は、電気自動車(EV)向け補助金などをめぐる共通基準づくりで合意し、作業部会を設けて協議を始める。脱炭素や経済安全保障、産業振興の観点から主要国で重要鉱物や自動車サプライチェーン(供給網)を含む優遇基準を策定する動きが広がっている。ただ、各国の基準が乱立すると自動車メーカーや大手部品メーカーの投資が混乱しかねず、日本とEUは一定の基準をそろえて投資予見性を高めることにした。情報共有や意見交換などを経て、世界市場での公正な競争と貿易・投資につなげていく考えだ。

 28日に大阪市で行われた「日EUハイレベル経済対話」で「透明、強靭で持続可能なサプライチェーンを構築するための政策に関する国際協力作業部会」を設置することに合意した。EVなどの産業補助金について共通基準のあり方などを協議する。

 28、29日に大阪市と堺市で開かれた先進7カ国(G7)貿易相会合でも「グローバルに公平な競争条件を確立することが重要課題」との認識で一致。国家に事実上、管理されたファンドなどを通じた産業補助金などに対する懸念を共有し、これらに対してルールや政策ツールの活用・強化で対抗するというメッセージを表明した。「不透明な産業補助金や強制技術移転などの政策や慣行は、公正な国際競争、貿易・投資を歪めるだけでなく、新興国や開発途上国の産業開発に悪影響を与える」との懸念も示した。

 G7の枠組みを超え、グローバルサウスや世界貿易機関(WTO)、民間企業との連携や情報共有も強化する。「グローバルに公平で透明性ある競争条件」を確保した多国間の補助金ルールや規範なども検討する。

 EVをめぐる補助金政策は、重要鉱物や半導体も含めて経済安保や自国誘致の様相が濃くなっている。北米での最終組み立てなど、一定条件を満たしたEVを購入すると税額控除を受けられる米国「インフレ抑制法」(IRA)が代表例だ。

 欧州委員会は4日、中国からEUに輸入されるEVについて、関税引き上げを視野に入れた調査を始めた。

 日本でも経済安保の観点からEV補助金の見直しを求める声が出ている。25日の衆議院本会議の代表質問では、国民民主党の玉木雄一郎代表が「クリーンエネルギー自動車(CEV)導入補助金」の対象を国内メーカーの国内生産車に限定するよう岸田文雄首相に迫った。岸田首相は「WTOルール上の課題もあると承知しているが、自由貿易の維持とGX(グリーントランスフォーメーション)実現の2つのバランスを取る観点から、引き続き適切な補助制度を検討していく」と応じた。