英国政府は20日、ガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止時期を2030年から35年に先送りすると発表した。スナク首相は「国民の生活コストが上昇し、負担を軽減するため」としている。高インフレに見舞われるなか、来年に迫った総選挙対策との見方もあるが、欧州連合(EU)のなかでも野心的な目標を掲げ、気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの国際会議や自動車産業政策で主導権を握ろうとした英国の思惑は大きく後退した。
英国では、20年に当時のジョンソン首相が環境対策などを含めた10項目の計画をまとめた「グリーン産業革命」の中で「30年までにガソリン車とディーゼル車の販売禁止」を打ち出した。翌21年には、COP26で議長国として40年までにガソリン車などの新車販売を打ち切る宣言を主導した。宣言には約20カ国が合意したが、日米やドイツ、中国は参加を見送った。
今回の声明により、英国では35年以降の新車販売のすべてを電気自動車(EV)をはじめとしたゼロエミッション車に切り替えることになる。EUでも、一部の例外を除いて35年までにガソリン車などの新車販売を禁止する。結果的に英国も35年に後ろ倒しすることになった。ただ、経済やエネルギー情勢は依然として不透明で、EUや英国が予定どおり、35年に電動車へ移行できるかも未知数だ。