昨年、欧州市場に参入したBYD。「IAAモビリティ2023」ではEV「SEAL U」を欧州初公開した

 欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、電気自動車(EV)について中国政府の補助金支援などが公正な競争を阻害していないか調査すると発表した。フォンデアライエン委員長は「安価な中国製のEVが市場にあふれている。巨額の補助金などによって人為的に(価格が)低く抑えられ、市場をゆがめている」と指摘した。欧州の当局やメーカーの懸念を代弁した格好だが、中国政府の反発も予想される。

 EUのルールでは、域外で不当な補助金を受けた輸入品が欧州域内の産業に損害を与えていると認められた場合、関税を課すことができるルールがある。8月末には、欧州自動車工業会(ACEA)のジグリット・デ・フリース事務局長が「中国の自動車産業は公的資金と政府の意向に支えられ、欧州や他の地域の自動車産業に攻勢をかけている」との声明を出していた。

 ただ、調査の結果、中国製EVに関税を課すことを決めた場合、中国政府が報復に動く可能性がある。過去に反ダンピング(不当廉売)措置として中国製太陽光パネルに制裁関税をかけたEUに対し、中国もEU産ワインのダンピング調査に入った。

 フォンデアライエン委員長は「中国とのコミュニケーションをオープンに保つことも重要だ」とも語ったが、域内の自動車産業と中国政府に挟まれ、難しい舵取りを迫られそうだ。