可知浩幸(かち・ひろゆき)社長

 電気自動車(EV)には不要となる燃料タンクを主力事業の一つとする八千代工業。燃料タンク需要が短期間で急減することは想定していないが、もう一つの主力であるサンルーフ事業や、樹脂・塗装部品事業などを強化するなど、持続的な成長に向けた取り組みを本格化している。

 ―EV市場の拡大で燃料タンクなどの内燃機関向け部品の需要が低迷することが予想されている

 「新たに策定した2023年度から25年度までの中期経営計画期間中にEVシフトの影響を受けることは想定していない。長い目で見れば(燃料タンク需要が)減少していくことは間違いないため、今のうちに樹脂・塗装部品事業を拡大していく方針だ。既存の樹脂部品の受注を増やすとともに、樹脂製テールゲート(バックドア)など外板にも広げたい。サンルーフ事業で培った複雑な形状の部品をモジュールで一体設計できる技術や、自動車メーカーとの関係が強みになる」

 ―電動車向けの事業は

 「軽量化が求められるEV向けにも樹脂製のモジュール部品の需要を開拓していきたい。また、市場規模は不透明だが、水素高圧タンクも開発しており、24年の認証取得を目指している。開発のリソースを燃料タンクから新しい分野にシフトしている」

 ―燃料タンク事業への今後の投資は

 「インドでバイオエタノール燃料の市場拡大が見込まれるなど、燃料タンクの需要は今後も見込まれるので、現在の経営資源を生かして展開する。ただ、適合開発などには投資するが、固定資産に投資することは考えにくい」

 ―サンルーフ事業を強化している

 「インドで想定していた以上にサンルーフのマーケットが伸びている。新車のサンルーフ装着率が上がっており、インドのモーターショーの展示車にもサンルーフを装着しているモデルが多かった。現在は中国で組み立てたサンルーフをインドに輸出しているが、需要拡大への備えと競争力強化に向けてインドで組み立てることにした」

 ―主要取引先のホンダ以外の新規取引先が増えている

 「ホンダ向けの当社のシェアをもっと上げたいが、それに加え、サンルーフ事業で中国地場系の新興自動車メーカーからの受注を獲得できるように活動している。中国の自動車メーカーは開発のスピードが早いので、これに対応していかなければならない。日本からエンジニアを送ったり、現地の駐在員を増やしているが、現地の自動車メーカーのニーズにレスポンスよく対応できる体制を検討している。インドでは、販売を伸ばしている地場の自動車メーカーから燃料タンクの受注獲得を目指している。今後も取引先を増やしていきたい」

 ―原材料価格やエネルギーコストが高止まりしている

 「まだ上昇の局面にあると想定しているが、自助努力では吸収できないため、自動車メーカーと価格交渉している。この間、経費削減や生産効率の向上を続けてきたため、体質は強くなっている。間接部門の業務効率を向上するため、データ集計作業などをデジタル化し、労務費や外注費を削減できた。新しい試みだったが成果があったので、生産部門を含めて業務の電子化を広げていく」

〈記者の目〉

 23年度からの中期経営計画に「変革の仕込みと事業体質の盤石化」を掲げる。EV時代を見据えて、将来の縮小が見込まれる燃料タンク事業に代わる経営の柱となる事業の確立を急ぐが、競争は激しい。自動車市場が拡大しているインドや中国で、サンルーフ人気が続く間にEV時代のサプライヤーにシフトできるかが将来を左右する。

(野元 政宏)

=連載おわり=