映画「戦争と人間」で、伍代家サロンにはいつも多彩で華やかな顔触れが揃う。残念ながら安達をモデルにした人物は登場しない。『戦争と人間』ⓒ日活

「時速3㌔㍍。3日がかり。牛で飛行機を引くとは…」―。生産工場で完成した飛行機は、牛があぜ道を歩き、飛行場に運ぶ。アニメ映画「風立ちぬ」の中で主人公の堀越二郎が疑問に思う。飛行機は最新技術でつくられるが、当時、地上での移動手段は牛の力というのだから皮肉だ。しかし、この滑稽な姿が日本の工業力であった。おそらく、何度も安達堅造は見た。そしてドイツ工業…