セレナ「eパワーハイウェイスターV」

 日産自動車は28日に全面改良したミニバン「セレナ」で、5年後の残価率を50%以上に設定した。主力の小型車や軽自動車の電気自動車(EV)でも30%台にとどまる中、同社として残価率を高めに設定することで、事実上の価格競争力を引き上げる。この背景には競合の多いミニバンの中で、日産の日本事業を支える主力商品として、より多くの販売につなげる狙いがある。同時に、ハイブリッド車(HV)「eパワー」モデルに最上級グレードを新設定しており、残価率の向上も追い風に、上級ミニバンを求める層まで取り込む計画だ。

 新型セレナでは主力グレード「ハイウェイスターV」の残価率をeパワーで56%、ガソリンエンジン車で50%に設定した。車のサイズや機能が違うため一概に比較はできないが、同社の軽EVの「サクラ」は35%、主力小型車「ノート」が30%強となっていることに比べると、強気の設定と言える。最近の新車販売では車両価格から、数年後の車の残存価値を差し引いた金額を対象にローンを組む残価設定クレジットの利用が増えている。思い切った残価率の設定により、新型セレナ購入者の月々のローン返済額を抑えることで、販売拡大につなげる。

 また、残価率を引き上げることで、セレナの購入層を広げる効果も見込む。原材料の高騰などから、今回の全面改良で従来型に比べて、eパワーが10万円程度、ガソリン車は20万円程度値上げした。日産ではライバル勢を意識し、「値上げ幅は競合モデルより数万円抑えてある」(担当者)としているが、車両価格は270万円台から480万円に迫る。歴代セレナを支えてきた若いファミリー層などで手が届きにくいケースも想定される。このため、高い残価率で毎月の支払額を低くし、さまざまなユーザーの購入への心理的なハードルを引き下げていく考えだ。

 ただ、残価を高く設定するほど、契約期間の終了時に、その価値を実際に担保できるかが難しくなる。日産では「セレナは成功しているモデルで死角もそれほどない」(同)と自信を見せており、「残価を高くして求めやすい価格にする」(同)ことを優先した格好だ。

 新たな最上級グレード「eパワールキシオン」で、セレナより上のクラスのユーザー層にも対応する。同グレードは、最新の運転支援システム「プロパイロット2・0」を標準装備とした。同一車線の走行で手放し運転が可能になるが、同社によると、ミニバンでは世界で初めての導入という。競合他社の上級ミニバンにもない機能を搭載することで、一つ上のクラスを求める顧客への訴求力も高める。また、「法人ユーザーは安全装置のニーズが高い」(同)傾向にあることから、企業向けの販売にも力を入れる方針だ。

 セレナは1991年のデビュー以来、今回で6代目になる。国内の累計販売台数は2021年末で約213万台。日産のブランド力ランキングでは、4位で知名度も高い。同社の車種別販売構成比の中で、約15%(直近5年間の平均)を占め、単価も高いことからメーカーに加え、系列ディーラーにとっても大きな収益源となっている。