世界的に新車需要は旺盛だが供給は追い付いていない

 世界的な半導体不足をはじめ、サプライチェーンの混乱で自動車メーカーの生産活動が大きく揺らいでいる。特に国内においては新型コロナウイルス感染拡大や自然災害の影響なども重なり、減産影響は海外に比べても大きく、長納期化が常態化している。これに加えて原材料価格やエネルギー、物流費の高騰が業績悪化に追い打ちをかける。自動車メーカー各社の2022年3月期の生産状況を振り返り、現在直面している課題や今後の展望を探った。

 トヨタ自動車の22年3月期の世界生産は前年度比4・7%増の856万9549台となり、3年ぶりに前年実績を上回った。21年3月期は新型コロナウイルス感染拡大により各国で生産拠点が稼働を停止して大きく台数が落ち込んだが、その反動からプラスに転じた格好だ。ただ、コロナ禍前の20年3月期(874万698台)の実績には届かず、世界的に新車需要が旺盛な中で供給は追い付いていない。

 生産の回復状況は地域によってばらつきがある。北米は同7・8%増の177万5658台となり、そのうち米国は同13・3%増の114万5534台と大きく伸ばした。半導体不足で各自動車メーカーが減産を余儀なくされる中、トヨタは影響を最小限に抑えた格好だ。米国の暦年販売ではゼネラル・モーターズ(GM)が90年維持してきたトップの座をトヨタに譲り、海外メーカーが初めてトップとなった。

 米国ではアラバマ州ハンツビルのマツダとの合弁新工場での生産を19年9月から開始し、SUV「カローラクロス」の生産を開始した。トヨタにとっては米国で5カ所目の完成車工場となるが、立ち上がりは半導体不足の影響や人員確保に苦戦しており、フル稼働には至っていない。同工場では早期にハイブリッド車(HV)の生産に着手し、操業の安定化を目指す。

 欧州は同1・3%増の70万6732台だった。フランスでは21年7月から新たに「ヤリスクロス」の生産を開始した。英国では、30年までにガソリン車の販売を禁止する方針を掲げる政府に対し、HVのみを生産するトヨタが英国から撤退する可能性を示唆したと、現地報道が報じた。他の市場に比べ電気自動車(EV)シフトが鮮明な欧州においては生産体制の再構築が求められそうだ。

 中国を含むアジアは、同9・5%増の286万1378台となり、コロナ禍前の20年3月期(243万5464台)の実績も大幅に上回った。中国は「ハイランダー」や「RAV4」などSUVが好調だったものの、新型コロナウイルス感染拡大で一部の工場で稼働停止し、前年実績を下回った。東南アジアでも電動車普及の機運は高まっており、インドネシアでは今後5年間で2400億円を投じて電動車の生産を拡充する。

 生産の回復ペースが鈍いのが母国市場である日本だ。22年3月期の実績は同5・4%減の276万843台となり、国内生産の目安である300万台を大幅に下回った。海外向けに比べて半導体の使用量が多い国内向けは減産影響が大きい上、さらに中国のロックダウン(都市封鎖)や部品仕入先のサイバー攻撃、自然災害などによる部品調達難も重なった。

 国内では需要に供給が追い付かず、長納期化が常態化している。「ランドクルーザー」やレクサス「NX」などは供給が追い付かず受注を停止、「ハリアー」は一部で注文済み顧客の契約取り消しを要請する事態に陥っている。トヨタ初の量産EV「bZ4X」は5月の発売直後にハブボルトの品質問題が発覚し、リコールを届け出た。いまだ原因究明に至っておらず生産が再開できない状況となっている。7月に発表した新型「クラウン」も部品供給不足を理由に発売は今秋にずれ込む。

 トヨタは仕入先に対し、23年3月期の生産計画を過去最高の1100万台と伝えていたが、半導体不足の影響が想定を上回り、970万台に下方修正した。ただ、8月末までの5カ月間では360万台程度しか積み上がらない見通しで、計画達成には残り7カ月平均で87万台程度の生産台数が必要になる。高水準の生産を維持するには仕入先とのさらなる連携強化が求められる。