スタンド経営において油外収益の拡大は欠かせなくなっている

 世界的に加速する脱炭素へのうねりが、燃料油の供給を担う給油所(ガソリンスタンド)にビジネスモデルの変革を迫っている。1996年の石油製品の輸入自由化、98年のセルフ給油解禁などの規制緩和を経て、足元でピーク時の半数にまで減った給油所。政府も電動車シフトの方針を打ち出す中、内燃機関車の新車販売が減少していくのは間違いない。これにより、給油所の経営を支えてきたガソリン販売の先細りは避けられないとみられる。給油所に、さらなる淘汰の波が間近に押し寄せるのか。脱炭素時代における給油所戦略を探る。

 「ガソリンの販売量は、ピーク時より1割減った」―埼玉県新座市で「エネオス」の給油所を運営する並木産業の並木重和社長は、スタンド経営を取り巻く厳しい現状を吐露する。経済産業省が2021年4月に公表した石油製品需要見通しによると、25年度のガソリン販売量は4210万㌔㍑。これは21年度以降、年率平均2・4%で市場が縮小する計算だ。19年度と比べると、14・7%も少なくなる。足元を見ると原油価格の高騰が続き、電動車の需要も拡大。経産省が試算したタイミングに比べて、さらに市場の縮小が加速する可能性もある。

 こうした中、石油元売り各社は、系列給油所の維持に向けた対策を積極化させている。目指すのは、エネルギー供給だけでなく、カーシェアリングなどモビリティサービスや生活関連サービスを組み合わせて提供する総合的なサービスステーション化だ。

模索はじまる次の一手

 昨年10月、静岡県島田市にある出光興産系列の給油所「島田セルフSS」(運営=西東石油)の店頭には、地元で採れた新鮮な野菜が並んだ。給油所のネットワークや集客力を生かした新たなビジネスを探す出光興産が掲げた「スマートよろずや」構想の実証実験の一環だ。同社では野菜販売のほかにも、医療機器の「磁気共鳴画像(MRI)」を搭載した車両を使った脳ドックや移動キッチンによるデリバリーサービスも給油所で試しており、総合的なサービス提供に向けた次の一手を模索し始めている。

 地場資本が運営する系列給油所の中では燃料油の販売だけでなく、ガスや飲食など他の事業を手掛け、新たな収益源になっているケースもある。こうした全国の好事例を集めれば、新たなビジネスモデルとして他の地域、特約店への展開も期待できる。同社の小久保欣正執行役員販売部長は「地域のニーズや特約店にあった『よろずや』化を果たせるよう、様々なメニューを用意したい」と特約店の祖業も生かし、給油所の収益源多角化を狙う考えだ。

狙うのはサービスプラットフォーム化

 最大手のエネオスホールディングス(HD)が力を入れるのも、自動車以外の幅広いサービスの受け皿となる給油所の「プラットフォーム」化だ。地域住民の生活に関わるガソリンや電気、水素、合成燃料などを販売するエネルギー供給拠点としての機能を維持することを前提に、新たなサービスを上乗せすることで、しぼむ燃料油の販売をカバーする。コンビニエンスストアや喫茶店、コインランドリーを併設した店舗展開もその一つだ。エネオスの小池泰弘販売企画部長は「モビリティやライフサポートサービスなどの新規施策を着実に打ち出していく事が重要」とし、収益源のすそ野拡大を進める。

 国内における20年度末の給油所数は2万9005店。最も多かった1994年度の6万421の半数を下回る数に減った。それでも新車ディーラーの拠点数(自販連会員分)が20年末で1万5619拠点である事を考えると、自動車関連のネットワークとして規模は決して小さくない。温室効果ガスを実質ゼロ化する「カーボンニュートラル」に向けて燃料油市場が縮小する中、ガソリン販売収益に頼らない〝脱給油所〟に向けた動きが生き残りのカギを握っている。