建物に大きな被害を受けた宮城スバルベストショップ栗生(17日、仙台市青葉区)

 宮城県と福島県で最大震度6強を観測する強い地震が16日午後11時36分ごろ発生した。東北や関東地区に拠点を置く自動車メーカーや部品メーカーは地震発生後に操業を停止し、安全確保に努めた。一部で建物や設備が損傷したが、人的被害は確認されていないという。一部メーカーは17日に稼働を再開しているが、引き続き状況の把握に努めている。ただ、亀裂が見つかった東北自動車道は通行再開に時間を要する見通しで、物流面への影響も懸念される。今後サプライチェーンに支障が出れば、自動車メーカーの生産にも影響が出る可能性がある。

 トヨタ自動車は17日、子会社のトヨタ自動車東日本(TMEJ、宮城県大衡村)の宮城大衡工場(同)と宮城大和工場(同県大和町)、岩手工場(岩手県金ケ崎町)3工場で1直の稼働を停止した。地震の影響で建物の天井はがれや一部の設備に被害が及んでいるという。安全を確認した上で再開する見通しだ。

 3工場は、16日深夜は2直稼働中で、従業員が避難してその後の生産を停止した。人的被害はなかったという。3工場に加え、エンジンなどを生産する宮城大和工場(宮城県大和町)も同日の2直を停止したが、17日は1直から稼働を開始する計画だ。

 今回の稼働停止による減産影響は精査中で、仕入先や販売店の被害状況も現在確認中としている。

 日産自動車は、エンジンを生産するいわき工場(福島県いわき市)の16日の夜勤を停止した。従業員の安全は確認済み。現時点で操業に影響する設備への被害は確認されていない。17、18日は従来から新型コロナウイルスの職域接種のため稼働予定がなかった。設備などの状況を細かく調べた上で来週以降の操業を判断する。

 スバルは群馬製作所の各工場の16日夜勤の稼働を停止したが、設備への大きな影響がなかったため、17日の1直は通常通りに稼働した。

 ホンダはエンジン部品を生産する真岡工場(栃木県真岡市)など国内の生産拠点に被害はなく、17日は通常通りに稼働している。

 部品メーカーも安全確保と状況把握に努めた。

 デンソーは、エアコンを生産するデンソー福島(福島県田村市)と半導体などを生産するデンソー岩手(岩手県金ケ崎町)で建屋と設備に一部被害があり、生産と納入への影響を確認している。デンソー福島は工場の配管や設備に影響があり、動作状況を確認している。

 アイシン子会社で、電子系部品などを手がけるアイシン東北(岩手県金ケ崎町)は17日朝時点で人的・物的な大きな被害は確認されていない。引き続き状況を確認し、物流への影響も注視する。

 フタバ産業子会社で、排気系部品などを生産するフタバ平泉(岩手県平泉町)は従業員や設備に被害なく、生産も止めていない。取引先の状況や部品輸送への影響を確認している。

 樹脂製フューエルタンクなどを生産するFTSの岩手工場(トヨタ自動車東日本の岩手工場内)は人員や設備に大きな被害はない。客先に連動して稼働を止めている。

 エイチワンは郡山製作所(福島県郡山市)が停電の被害を受けた。被害状況や今後の影響については精査中としている。

 住友ゴム工業は、地震発生直後に白河工場(福島県白河市)での夜間操業を停止した。17日朝も生産ラインを止めて工場内の安全を確認している。スプリンクラー配管など一部の設備が損傷したが、同日午前11時時点では午後から復旧する予定だ。津波による浸水被害や停電の影響はなかった。

 トーヨータイヤの仙台工場(宮城県岩沼市)は地震発生直後に工場内のラインを全て停止した。工場内の配管の一部の損傷や倉庫内のラック倒壊などの被害があり、17日午前10時時点でラインを止めて安全確認を続けている。対策会議を立ち上げ、製造工程での影響のほか、桑名工場(三重県東員町)での代替生産、停電や物流の影響などを含めて調査・検討を進めている。

 ビークルエナジージャパンの佐和事業所(茨城県ひたちなか市)は建屋の被害はなく、設備転倒や破損なども確認されていない。人的被害もなかった。17日は通常稼働した。

 フォルシアは17日正午時点で、カメラやECUなどの車載機器を製造する郡山工場(福島県郡山市)の稼働を一旦停止した。再稼働できるかを点検している。

 IJTTは車載製品を作る岩手や宮城の工場で、設備が破損していないことを確認した。点検しながら稼働している。

 村田製作所子会社で、ノイズ対策フィルターの設計開発や製造を手がける登米村田製作所(宮城県登米市)では、地震の影響で17日未明に工場で火事が発生した。同日の消火活動で鎮火し、けが人はいないという。工場は稼働を停止し、被害状況を調査している。

 ルネサスエレクトロニクスは、那珂工場(茨城県ひたちなか市)の操業を地震発生後から停止した。一時停電が発生したものの、現在は復旧し一部設備で再開した。

 宮城と福島のディーラーではショールームやサービス工場、事務スペースで被害が確認された。ショールームのガラス破損や壁の亀裂、サービス工場の壁のボード材の破損や落下が生じた。納車前の新車やサービス入庫車両に落下物が当たる被害も発生した。ディーラー店舗の一部ではサービス工場の安全確認が取れるまで業務を中断している。

 最も被害が大きいのは福島県相双地域。相馬市や南相馬市は停電や断水が発生し、営業できない状況となったディーラーがある。敷地内の舗装に亀裂や段差が生じるなど被害が深刻な店舗もあり、完全復旧には時間がかかりそうだ。

 一方、人的被害は確認されていない。ディーラー関係者らは「地震発生時間が夜だったのが良かった。昼間だったら、けが人の発生やリフトで上げた車の落下も生じたかもしれない」と口を揃えた。