日本自動車輸入組合（JAIA、クリスチャン・ヴィードマン理事長）が開いた「JAIA輸入車試乗会」。一度にさまざまな輸入車を体験できる貴重なイベントに若手記者が参加した。取材でも普段はあまり乗る機会のない最新の輸入車は、今どきの若者にどのように映ったのか。第2回目はニューモデルの投入が相次いでいる電気自動車（EV）について率直な意見を交わした。
メーカーによって違うEVの方向性
電子版編集長（編）「とにかく個性が際立つ『DS3クロスバック』だけど、今回乗ったのはEVだよね。運転した印象は？」
カー用品担当男性記者M「パワーなど走行性能は普段乗りには充分かな。EVに期待するアクセルを踏み込んだ時の加速力はあまり感じられなかったけど、普通のガソリン車のような乗り味なので、買い物など街乗りでは使いやすいのでは」
部品メーカー担当女性記者F「初めてEVを運転したけど、とても静か。加速力はそれほどではないかな。至って普通のクルマ。小回りが利くので女子でも抵抗なく乗れると思う」
編「個性的なビジュアルと違って運転すると普通なんだね」
M「DS3と違って、アウディ『e-tron』はいかにもEVという感じ。走り出しの加速感はトルクフルで車両の大きさを感じさせない力強さ。静粛性も高く、ロードノイズばかり耳に入ってくる。静かなのに速度が一気に上昇する感覚は、EVに乗りなれていない僕には不思議な感覚だった」
F「e-tronはすごくわかりやすい。応答性が良く、アクセルを踏むと一気に加速するので、ストレスが少なくて、運転がラクに感じた」
輸入車担当男性記者U「今回はe-tronとの比較となったから、DS3のトルクに物足りなさを感じたのだと思う。DS3もガソリンモデルと比較すれば、出足などでやはりEVらしいトルクは感じられる。DS3を運転して普通に感じるのは、アクセルレスポンスや荷重移動の挙動などがガソリン車のように自然で、良くも悪くもEVらしい癖がないからだと思うよ」
編「DS3は自然な挙動を狙ったセッティングなんだろうね。マツダも『MX-30』で、EVより“マツダらしさ”を重視していたし」
U「EVはメーカーによってクルマの方向性がかなり違う。e-tronとDS3は両極端な存在だね。今回は試乗していないが、BMW『iX』もe-tronのように、いかにもEVといった感じで、ガソリン車との違いを強調している。一方、メルセデス・ベンツ『EQC』は違和感なく乗れる感じで、性格的にはe-tronとDS3のちょうど真ん中くらいかな」
M「e-tronの走りはいいけど、カメラを使ったデジタルドアミラーは苦手かな。死角とかが何となく不安で、慣れが必要。いつもの癖で、思わず頭を動かして角度を変えてモニターを見てしまった。鏡じゃないから映る範囲は変わらないんだけど。あと、ニョキっと生えたようなカメラもあまりカッコ良くないし」
F「ドアに設置するモニターの位置も良くないよね。普通のドアミラーより若干下についているので、後方確認時に下を向く感じになる。見える範囲は広がっているのだろうけど不安だし、視線移動が大きくなるので危険だとも感じた」
U「デジタルルームミラーも違和感があるよね。疲れるし。この手の新技術ってメリットはわかるけど、まだ発展途上な気がするね」
EVとエンジン車。選ぶなら…
編「ところで、EVへの抵抗感とかはないの？ 特にクルマ好きの男子2人は、やっぱりエンジン車の方が良いとか」
U「EVは全然“アリ”だと思う。抵抗はない。同じモデルにガソリン車とEVの設定があったら結構真剣に悩むと思う」
M「僕はEVよりプラグインハイブリッド車の方がいいかな。EVの走行性能はアクセルの踏み加減にリニアでレスポンスも良く、スポーツカーみたいに気持ちいいけど、長距離を走る機会が多いので、やはりEVを選ぶのは厳しいね」
編「確かに長距離には向かないね。大容量のバッテリーを積んでいるハイパワー系のEVも満充電での航続距離は長いけど、重くて電費が悪いから、もしも出先で電池切れになると、今の急速充電器だと航続距離が確保できなくてかなり困るだろうし」
F「私は断然EVの方が良かった」
編「なぜ？」
F「静かだから。クルマは静かな方がいい。運転感覚は、日産の『eパワー』をよく運転していたせいか、ほとんど違和感はないかな」
M「eパワーは好評だよね。EVも充電の問題を除けば日本では好まれると思う」
F「でもe-tronって1000万円以上する割には、高級感のようなものはあまり感じられなかったかな」
U「EVって高級車というよりは、今は未来感とか新しいモノ感をアピールするフェーズだと思うよ。iXなんて運転すると未来感の塊だし。バッテリーなどコストの制約がすごく厳しいという理由もある。そういう意味でもやはりEVってまだ黎明期なんだと思う」
