佐藤基行(さとう・もとゆき)社長

 ―事業の再構築を進めている中でコロナ禍に見舞われた

 「他社以上に激動の2年だった。外部環境に左右されない体質を構築する過程では会社設立以来、初の希望退職を行わざるを得ない状況にもなった。苦しい2年をさまざまな手を打って乗り越え、社員の意識も変わり、危機感をもって頑張ってくれている。今こそ仕掛けをする機会だと捉えている。出血と手術が大き過ぎたが、それを取り返す。早期退職に協力してくれたメンバーへの恩返しのためにも、ここ1、2年で企業体質を強化することが私の使命だ」

 ―海外事業の構造改革が進んでいる

 「中期経営計画の中で海外事業の止血と再建を進めてきた。事業再建の柱はインドネシアと北米にある子会社の黒字化。インドネシアは生産性が改善して営業黒字を継続している。再建は完了し、成長のフェーズに入った。足元では対応できないほどの注文を受けており、まだまだ期待値もある」

 「北米はコロナ禍や半導体不足、原材料価格、輸送費高騰など、一過性の要因が重なり苦戦している。現地の特殊鋼メーカーが経営破綻して調達できなくなる状況にも陥ったが、室蘭工場から材料を出荷することで対応するなどしてきた。(供給責任を果たしたことで)自動車メーカーからの信頼性が上がり、新規受注にもつながっている。2つの工場を1つにする計画も進めている」

 ―電気自動車(EV)シフトは成長につながるのか

 「EVになると軸受けにも高性能な製品が求められるようになる。当社としては室蘭工場に投資して軸受け材料として使われる鋼材の生産能力を増強する。EV用軸受け鋼材はハイエンドのものが求められる。きっちりと需要を取り込み成長につなげていく」

 ―EV向けに生産能力を増強する計画は

 「室蘭工場で生産している4万㌧のうち2、3割分をEV用軸受け材に回す。2022年度中に実行する」

 ―電動車時代に求められるスプリングとは

 「ばねはEVシフトとリンクする。サスペンション用スプリングに関して、重量のある電池を搭載する乗用EVで、内燃機関車と同じ操縦安定性や乗り心地を実現するためにはサスペンションの性能を向上する必要がある。商用EVについては、車載電池が増えたからといった積載量が減ることがあってはならない。このため、形式も含めて圧倒的に軽いサスペンションが求められる」

 ―働きやすい職場づくりを進めている

 「製造現場にダイバーシティエリアを作った。例えば現場に100人いるとすると、このうち10人の職場は誰もが働きやすい職場にするようにしている。すでにエリアを指定したので、22年度には該当するエリアで取り組みを進めていく。まずは1年で一定の結果を出す。最終的には10%と言わず、すべてのエリアがそうなるようにしていく」

 「働きやすい職場づくりは生産の効率化の効果も見込まれる。高齢化が進展する中、こうした仕かけを作っておくことは重要だ。ベテランが少なくなり、若い社員だけでは何もできないと、ならないように今のうちから対策をとっていく。熟練者に限定している職場を、誰もが作業できるようにしていく。そのツールとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく」

《記者の目》赤字だった海外事業の止血にめどをつけ成長のステージに入った。持続的成長に向けた基盤が整いつつある中、ダイバーシティーや脱炭素に向けた活動も強化するなどESG経営に力を入れる。車両電動化も成長戦略につなげていく方針だ。

(水町 友洋)