国内タイヤメーカーの経営を取り巻く事業環境が厳しくなっている。国内タイヤ4社は、高付加価値製品の比率向上などで業績が回復、新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年12月期業績を上回る業績となる見通しだが、原材料高騰やコンテナ不足による物流の混乱、米国での人手不足による賃金上昇など、先行き懸念材料が少なくない。各社とも利益率向上に向けた構造改革を推進している中、逆境を乗り切ることができるのか、真の実力が問われる。

 天然ゴムやナフサなどのタイヤの原材料価格の高騰がタイヤ4社の業績の足を引っ張る見通し。今期業績で原材料価格の高騰だけでブリヂストンで840億円、住友ゴム工業で308億円、横浜ゴムで116億円、トーヨータイヤで185億円それぞれ営業利益を押し下げる影響を見込む。コロナ禍からの世界経済の回復が見込まれる中「天然ゴムや石油系材料の相場価格は引き続き上昇する見込み」(住友ゴムの山本悟社長)で、タイヤ各社の業績の大きな懸念材料となっている。

 原材料価格の高騰を受けて、住友ゴムは今年に入って米国で3回、欧州で2回の価格改定を実施した。米国市場で価格改定を3回実施したトーヨータイヤだが、清水隆史社長は「米国のようにバックオーダーを抱えている市場の値上げは通るが、アジアや欧州で値上げしてすべての原材料高騰分を吸収するのは難しい」と、価格転嫁が厳しくなっているとの認識を示す。今後も価格改定を推進して収益を確保することには意欲的だ。

 コンテナ不足による物流費高騰も深刻だ。ブリヂストンは、海上運賃高騰による影響額として1~6月期だけで40億円を計上した。通期では140億円になる見通しで、物流効率化や製品価格への転嫁などで吸収していく構え。「新たな海上輸送のパートナーを開拓し、輸送に協力してもらう活動を進めている」(石橋秀一CEO)など、課題解決に向けた取り組みを本格化している。

 横浜ゴムもフィリピンとタイを中心にコンテナ不足による製品供給に影響が生じているが「(コンテナ不足は)8、9月頃には解消するだろう」(山石昌孝社長)と予想、当面は静観するもようだ。

 米国経済の回復がタイヤ需要の増加につながっているものの、経済の急回復によって人手不足が深刻化、労務費も高騰している。トーヨータイヤは、米国工場で乗用車用タイヤ生産ラインに従事していた人員を、利益率の高いライトトラックやワイドトラック用タイヤのラインに振り分けた。乗用車用タイヤは日本やマレーシアから輸入する。

 米国工場は高付加価値製品の比率を上げて収益を確保する。米国では新型コロナ関連の失業保険の給付金制度が終了すれば労働人口が増加する見込み。「今後動き出す労働市場をうまく取り込み、生産(レベル)を元に戻す」(トーヨータイヤ・宮崎祐次執行役員)と期待を示す。

 タイヤ各社の業績は付加価値の高い製品を重視する構造改革を推進してきたこともあって大幅に回復している。ただ、コンテナ不足や原材料価格の高騰などは、想定を超える水準で、各社は先行き慎重な見方を崩していない。