大型車メーカー大手2社がタッグを組む

 カーボンニュートラル社会に向けた機運の高まりが物流業界と大型車メーカーを揺さぶっている。物流業界は、事業活動での脱炭素化に向けて電動車の導入機運が高まり、大型車メーカーもニーズに対応しようと模索するものの、車両価格の上昇が大きな壁として立ちはだかる。物流効率化に有効とみられるコネクテッド技術も、通信システムの標準化が進まず、商用車メーカーごとにデータがバラバラなら効果も半減する。ドライバー不足やネット通販市場拡大による宅配需要の増加、さらに脱炭素化対応など、危機に直面する物流業界の課題解決につながる取り組みを模索する商用車メーカーの姿を追った。

 小型トラック保有事業者で、ハイブリッド車(HV)の導入を検討している比率は39%―。日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)が今年4月に発表した「小型・軽トラック市場動向調査」によると、HV購入意向は前回調査から9㌽アップした。プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)の導入意欲も前回調査から軒並み上昇し、トラック運送事業者の電動車導入意識が着実に高まっていることを示した。

 現状、日本の商用車メーカーが導入している電動車は日野自動車の大型HV「プロフィアハイブリッド」、三菱ふそうトラック・バスの電気トラック「eキャンター」など数少ない。しかもこれら電動車は割高な車両価格や、充電インフラなどの問題がネックとなり、販売台数はわずか。

 日野といすゞ自動車が22年に小型電気トラックの国内市場への投入を公表、三菱ふそうもeキャンターを全面改良する計画で、商品ラインアップは拡充される見通しだが、販売最前線で電気トラックの導入意欲が高まっているとは言えない状況が続く。

 トラックの導入費用は、中小・零細が多い運送事業者の経営に大きなインパクトを与えることから車両価格に対する要求が厳しい。これに加え、サイズや用途が異なる商用車の場合、充電網などのインフラによって代替に制約が生じる。50年のカーボンフリー社会実現に向けて政府が6月に示した「グリーン成長戦略」でも大型トラックの電動化の目標設定は30年に先送りした。

 こうした状況下、企業規模が小さく、投資も限られる大型車メーカーが物流業界のニーズに対応するために有望視しているのがアライアンスだ。排ガス規制などの環境対応や自動運転技術の進化を背景にここ数年、大型車メーカーの業界再編は加速した。日野は18年にフォルクスワーゲン(VW)グループのトレイトン、20年には中国の比亜迪(BYD)との協業で合意、いすゞは19年にボルボとの包括提携を結ぶとともに、傘下にあったUDトラックスを買収した。さらに、ディーゼルエンジンではカミンズと、燃料電池領域ではホンダとそれぞれタッグを組んだ。さらに今年4月、いすゞは日野、トヨタ自動車と提携し、物流問題の課題解決を目指す「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」を設立。大型車メーカーはアライアンスを活用することで、電動化などの開発コストを分担するとともに、電池などの部品を共通化することで車両価格の上昇を抑えようと取り組む。

 矢継ぎ早の提携戦略を打ち出すいすゞの片山正則社長は「カーボンニュートラルに必要なのは100㍍走の筋肉ではなくマラソンランナーのスピードで42・195㌔㍍を走り切ること」と、50年の脱炭素社会を見据えて取り組んでいることを明かす。

 トヨタで電動化技術に携わり、6月に日野のトップに就任した小木曽聡社長も「1997年にトヨタがHVを出してから議論を続けてきたが、結論は(パワートレインは)顧客が決めること」と話す。物流業界が求める電動商用車を投入できるのか、大型車メーカーの模索が続く。